大宮さんのお話です。
軽くBL含みますので、苦手な方はご遠慮下さい。









「なぁ、ずっと…大事そうに持ってたけど。そのハコ 何?」

「…そういえば、何か入ってるのかな?」



あのまま 置いてきてはいけない。

…そんな気がして
持って出てきたけれど。


今まで、本棚の隅に収まったまま
その存在すら忘れていた…この箱。

軽くて、振っても
カサカサと 乾いた音しかしなかった。

{F4319711-DCBA-4043-9488-58A2A727A358}


そっと  フタを開ける。


「…あ…」


そこには、一枚の写真が入っていた。


並んで写っている
じいちゃんと…小さいオレ。

あの日この場所で撮った 
二枚の写真。



父さんにも、母さんにも

カズヒコにも…見せたくなくて。


オレと じいちゃんだけの 
秘密の宝物だったから

この箱に入れて 
隠しておいたんだ。


誰にも 見つからないように…。




…じいちゃん だったんだね?


オレを…

オレ達を 救ってくれたのは。



大野さんと 出逢った事も


そう


何もかも 全てが 必然だった。




オレは…涙の溢れる顔を
大野さんに押し付けて

久々に  声を上げて 泣いた。





「…よし、今日は臨時休業だ!」

涙と鼻水でグチャグチャになった
大野さんのシャツ。

それを気にする様子もなく

サッと書いた割りに かなり達筆な  
  ”臨時休業”  の紙をドアに貼り付け
オレに向き直る。

「…え?  いや、ごめん!
大丈夫だから!邪魔なら帰るし…」


涙はまだしも…
鼻水は悪いよな、と思いながら
タオルを絞って 大野さんの胸元を拭った。


「お前、邪魔とか本気で言ってる?んなワケねーだろ!?
元々 ココは気まぐれに開けてたんだ。常連さんは慣れてるよ。…じいちゃんの頃からな。

だから、今日は休み!
よし、メシにしよう!」


大野さんの淹れてくれた
コーヒーの香りが 鼻をくすぐる。

のんびりと 朝食をとりながら…
大野さんが 口を開いた。


「…同じ写真、もう一枚あったんだ」


手帖から、少し 色あせた 写真を取り出した。


「うん…ポラロイドカメラで撮った写真だから、全く同じって事も無いけど。

二枚撮って、一枚をオレが持って帰ったんだ。…大事にし過ぎて どこにしまったのか…今迄 忘れてた」



手にしたカップを 口に運び


あの時と同じ

すっかり ぬるくなった
懐かしい味を

ゆっくりと…味わった。



「…本当に今日、休みで良いの?」

「うん。どっか行くか?」

「オレ…じいちゃんの墓参りに行きたい」

「そうか…そうだな!
今日、月命日なんだ。一緒に行こう。
じいちゃんに…嫁の顔を見せないとな♡」

「…嫁は  勘弁して下さい」

ふふっと…笑った。





つづく




2015.11.10   miu