大宮さんのお話です。
BL小説ですので、ご注意下さい。









………!


「………てよ!」


「おいっ!!」



何も考えられず

闇雲に走っていたオレの手を 掴む
…力強い 手。



「 待てって!
…お前、意外と 足速いな」

「…もうさ、放っておいて…くんない?」

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オレは 大野さんの 顔を…見れなかった。


「放っておけるかよ。とにかく…そこに公園があるから、座って話そうや」


カズヒコから もたらされる快感は
未だ…躰中を這い回っている。


「ゴメン…もう、オレは…」


涙目で 震える  オレの様子で察したのか
手を掴んだまま  大野さんは

そのまま…
公園のトイレへと入って行く。


狭い個室に 二人

ジーンズに手を掛け…取り出した。


「ちょっ! アンタ?!」

「一回、出しとけよ」

「…だったら、自分でスルから!」

「シッ! 黙っとけよ…外に聞こえるぞ?」

そう言われ…
慌てて口を閉じた。


身動きの取れない こんな場所で
器用に…手で …始める。

 
元々…今にも達しそうな状態だっただけに、濁を 吐き出すのは早かった。

大野さんはソレを、ケツのポケットに入れていた タオルで 拭い取り、ジーンズを 引き上げる。 


「…なあ、一度 店に戻ろう。
こんな所で話すのも アレだし…な?」


柔らかく 微笑んで 
オレの頭を クシャッと 撫でた。


抗うことも出来ず

大野さんに連れられたオレは
再び 店に戻った。


「今日は 定休日だから、気にすんなよ。

……あの、お前さ?  よく知らない奴と…こういう事してんのか?」


違う、と  言いかけて
…そのまま  言葉を飲み込んだ。


実際、こんな事は 初めてだった。

いつもなら…ジッと我慢していれば、アノ感覚は 通り過ぎるのに。

あんな、闇雲に欲しくなるような…生々しい感覚が 伝わって来たのは初めてだった。

でも、そんな言い訳を この人にして  どうなる?
それこそ  初めて会った奴に…。


「だったら、なによ?
…ああ、誰でも良かったんですよ。
たまたま アンタが目の前に居た…ただ それだけですから」


ウソじゃあない。
あの時は 本当に 行きずりの相手でも良いと 思ったんだから。

ククッと  自虐的に 笑ってみた。


「だったら……おれに しとけよ」


…耳を疑う。


「…は?  何言ってんのよ?」

「言い方が おかしいか。
ん~、何か…理由があるんじゃない?
さっきだって、その…ヤりたいっていうよりも  なんか、泣きそうな顔してたし。発作?とか…そんな感じにも見えたけど」

「別に…そんなんじゃ…」

「無理に話せとは言わないよ。
でも、なんつーか…放っておけないんだよな。
さっきみたいな、どうしようもない時は  他の奴じゃなくて…おれが 手伝ってやるから」

「…アンタさ、おかしいんじゃないの?」

「んふふっ、そうかもな」

「………。

…こんなの…気持ち悪いだろ?」

「ん~?驚いたけど、そんだけ  」

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今もまた、優しい眼差しが注がれている。

その瞳は  嘘をついているようには見えなかった。


…というより、オレが信じたかったのかもしれない。


目の前で 優しく微笑む
この人を。


…大野さんの 視線が
面映ゆくて 下を向いた。



「…カズナリ」

「あ!…名前? やっと言ったな。
ふふっ、チョット懐かれた気分♡」

「…ってさ、ノラ猫じゃないんだから…」


飛び出してきた時のまま…

カウンターの上に置かれたコーヒーに 手を伸ばし、それを口元へ運んだ。

「美味い…」

涙が…滲んだ。


「あ、熱いの 淹れてやるよ!」

「…ううん、コレがいい  」


ぬるくなったコーヒーを流し込み


オレは  ポツリ、ポツリ…と
カズヒコの事を 話し始めた。



つづく

2015.8.7  miu