UPの順番間違えた…(^^;;




「こんな時間に…すいません。
よろしくお願いします」

ペコリ、と 頭を下げた…
猫背のこの人。


診療時間をとっくに終えた 
午後9時前。


事務も 歯科助手も既に帰り
ここにいるのは

オレと

友人の紹介で
このクリニックを訪れた
大野 さん。


「いえ、良いんですよ」

軽く頭を下げてから

当面の治療にあたっての
説明を 始めたのだけれど。

キョロキョロと辺りを見渡し

落ち着かないのかと思えば
ボーっとしていて。

説明も 聞いているのか…?
さっぱり分からない。

顔を近づけ 覗き込む。


「…大野さん、聞いてます?」

「あっ!?…はいっ、聞いて…ます」

至近距離で見る
この…少しだけ怯えたような表情。


…緊張してる?

いい歳をして、歯医者が怖いってコトなのか?

フ、フフッ…
何だか 可笑しくなって
笑ってしまった。


歯医者というのは いくつになっても
確かに 嫌なものだ、と そう思う。

…オレだって
治療される側になれば、まぁ…正直 行きたくないよね。


思わず笑ってしまった
オレを見て

それまで 強張っていた 
大野さんの表情が 柔らかく 緩んだ。


…間違いなく
オレよりも 歳上なのに

笑顔一つで 安心したように
フニャリ、と笑う
このひとを


迂闊にも  可愛いと。


そう 思ってしまった。


チェックをすると
虫歯は 2箇所 あり

この程度であれば
掃除と治療で…4~5回 通ってもらえればキレイに治るだろう。


顔半分にタオルを乗せ
口元だけを 残す。


始める前から 大きく口を開け

じっと 待っている彼が、あまりにも可愛くて…

再び笑ってしまった。

「…大野さん、口、開けて貰いたいときは言いますから。
まだ 普通にしてて良いですよ?」


大きく開けたまま
待っていた唇から 力が抜け

現れた 形の良い…唇。


気づけば  オレは

使い捨てのゴム手袋を外し
人差し指で なぞっていた。


吸い付きたくなるような
その 唇を。




つづく

2015.11.25  miu