つづき
ガタン、と 音がして 声が続く。
「あ~ニノ、ビール飲んでる!
オレにもちょうだい!?」
人の返事を待つまでもなく
ワタシが持っていた 缶を
自分の口元へと 運んだ。
「ウマっ!!
ん? 何で…泣いてんの?」
「何でも無いです…」
「何でもなくないよ!
あ、もしかして…さっきの 痛かった?ゴメン!」
腰に伸ばされた手を、叩いた。
「そうじゃ…ないけど。
もうさ、勝手にウチに来るの…やめて貰えます?」
相葉さんの 目の前に、連なった 5本の鍵を 差し出した。
「ウチの鍵、どれ? 外して?」
「…理由、聞いて良い?」
「アナタさ、こういうの 別に…ワタシじゃ無くても良いんでしょ?
他の…誰かと楽しみなさいよ」
「なになに?…どういう事?
ニノは、オレが誰でも良いって…そう思ってんの?」
「じゃあ…この鍵はさ。
相葉さんのとウチと…あとドコよ?」
キョトンとした顔で
鍵とワタシを 交互に見る。
「それ…5本とも全部 ニノんちの鍵だけど」
(O_O) ??
はい?
この人…何を言ってます?
「だって、見つかる度に 取り上げられちゃうから いっぱい作っておいたんだよね 」
エヘヘっ…っと
照れながら鞄を 探ると
もう一つ 同じ様な 鍵の束が現れた。
「コレも、ニノんちの鍵!」
もはや 相葉さんの言ってる意味が…わからない。
日本語を喋っているのかすら 怪しくなってきた。
「ねーねー!交換する?
オレんちの鍵、あげるよ?」
「…いりません」
「なんで? もらってよ!」
「アナタんちには … 行きませんから!」
「あ、オレがココに住めば良いって事?」
「はぁ?!
なにワケの分かんない事を。
もう…サッサと 自分の巣に帰れや!!」
言い終わらないうちに
長い腕が ギュッと絡まり
抱きしめられる。
「くふふふっ!あんな事も、こんな事も…ニノだけだからね♡」
「ちよっ… 苦しいって!この…チカラ加減バカ男っ!!」
「も一回、して良い?」
「 もうさ、話 噛み合ってないよね。
言っておきますけど、アナタ…うちに出入り禁止だから!」
「えー?
でもココには…入れても良いんだよね?」
「アァっ?! チョット…んっ…」
相葉さんの長い腕は
抱きしめた背中から 下がってゆき
丸い…ふたつの丘を撫で回す。
底抜けに明るい笑顔を
真っ直ぐ…ワタシに向けるから
何だか バカバカしくて
抵抗する気が 失せてしまった。
…ため息を一つ。
「…もう、好きにしなさいよ…」
とりあえず
このケモノが 眠ったら
まぶたに目でも書いてやろうかと…
そんな事を考えながら
……唇に、噛み付いてやった。
終わり
2015.7.26 miu