side:S



たまたま 入ったコンビニ。

店から さほど遠いわけではなかったが、少しだけ 遠まわりになるから…

今まで あえて 寄ったことは 無かった。


連れの女は…金回りのいい 上客で

求められれば、ベッドを共にする事もある相手だった。


ふ、と  

ゴムを 使い切ってしまっていた事を思い出し

目に入った …
この  コンビニへと 足を運んだ。



最初は 気付かなかった。

深夜  あまり人の 多くはない
この場所で


……出逢う なんて。



何でも良かった。

適当に 目に付いた
ゴムと…水を手に取り


レジで タバコを 買おうと
顔を上げ、息を飲んだ。

{9A0242FB-2AFB-49CE-93CE-DBE3E5062C3A:01}



………雅紀(まさのり)?



何処と無く 
似た雰囲気を持っていた。

やわらかな 髪
細い腰

眩しい…笑顔。


無邪気な  表情の中の
本質を 探るような…

まっすぐな 瞳。



まさのり 本人でないことは …
当然分かっている。


けれど


胸の名札に 目をやると

”相葉 雅紀”  と 書かれていた。



「まさ…のり…?」

思わず 言葉に出してしまった。


「?   あ、オレ?  ”まさき” です。
…お兄さん、お仕事終わりです
か?」


………まさき、っていうのか。

そうだよな。
雅紀は…もういない。


同じ 名前と … 
少し似た 雰囲気を持った こいつは

人懐っこい笑顔を
俺に向けた。


「フフッ… また 来てくださいよ」

「……何で?」

「…そりゃあ、バイトとは言え…

一人でも お客様が 増えれば 店舗の 売り上げは 上がりますから?」


俺に会いたいから?

なんて…一瞬  勘違いしそうになった 自分が 恥ずかしい。


「…あははっ
そりゃそうだ!  ”何で? ” はないよな。
…うん、また来るよ」


熱を持った 耳は 
恐らく…赤くなっているんだろう。

笑って誤魔化しながら
俺は コンビニを 後にした。


つづく