side:S
たまたま 入ったコンビニ。
店から さほど遠いわけではなかったが、少しだけ 遠まわりになるから…
今まで あえて 寄ったことは 無かった。
連れの女は…金回りのいい 上客で
求められれば、ベッドを共にする事もある相手だった。
ふ、と
ゴムを 使い切ってしまっていた事を思い出し
目に入った …
この コンビニへと 足を運んだ。
最初は 気付かなかった。
深夜 あまり人の 多くはない
この場所で
……出逢う なんて。
何でも良かった。
適当に 目に付いた
ゴムと…水を手に取り
レジで タバコを 買おうと
顔を上げ、息を飲んだ。
………雅紀(まさのり)?
何処と無く
似た雰囲気を持っていた。
やわらかな 髪
細い腰
眩しい…笑顔。
無邪気な 表情の中の
本質を 探るような…
まっすぐな 瞳。
まさのり 本人でないことは …
当然分かっている。
けれど
胸の名札に 目をやると
”相葉 雅紀” と 書かれていた。
「まさ…のり…?」
思わず 言葉に出してしまった。
「? あ、オレ? ”まさき” です。
…お兄さん、お仕事終わりです
か?」
………まさき、っていうのか。
そうだよな。
雅紀は…もういない。
同じ 名前と …
少し似た 雰囲気を持った こいつは
人懐っこい笑顔を
俺に向けた。
「フフッ… また 来てくださいよ」
「……何で?」
「…そりゃあ、バイトとは言え…
一人でも お客様が 増えれば 店舗の 売り上げは 上がりますから?」
俺に会いたいから?
なんて…一瞬 勘違いしそうになった 自分が 恥ずかしい。
「…あははっ
そりゃそうだ! ”何で? ” はないよな。
…うん、また来るよ」
熱を持った 耳は
恐らく…赤くなっているんだろう。
笑って誤魔化しながら
俺は コンビニを 後にした。
つづく