意外な横顔。
この写真、よ~く見て欲しい。 見慣れたエクスプローラーと違う…ハズ。気付いたかな? サイドステップを外しているのだ。リフトアップしているように見えるけど車高はノーマル。でもこの状態で前後バンパーを含め、ボディーの全てがタイヤの中心より上にあるのが見て取れる。まあ、フレームはそれより下に見えているけれど。

$KEEP ROLLIN'



最低地上高はともかく、ボディー各部にこれくらいグランドクリアランスがあれば、結構激しいオフロードを走れるもの。どのくらい走るかっていえば…以前撮ったムービーを見ていただこう



映像は富士ヶ嶺オフロードのモーグル。電子トラクションコントロールを使って凹凸地形をモノともせずに走っている。なにが凄いのか? オフロード初心者の人にもわかるように、ちょっと詳しくご説明しよう。

①タイヤが浮いても走り続ける!
ぬかるみで片輪を空転させスタックしているクルマを見たことがあるだろう? あれはディファレンシャルのせい。デフには「内輪差を吸収しながら同じトルクを振り分けて伝える」という大切な役割があるけど、反面、片輪が空転するとそこから駆動力が逃げてしまう、というやっかいな性質も併せ持っている。

四駆といえどこの呪縛からは逃れられない。2WDのクルマとは違い、前後にふたつデフがあるのだが、やはり前後輪でそれぞれ1本づつ浮くタイヤがあればスタックしてしまう。

上の動画を思い出して欲しい。右前輪と左後輪、というように対角線上のタイヤが浮くようなラインを走っていただろう? 普通はこの状態でスタックしてしまうもの。我々はこれを「対角線スタック」と呼んでいる。

でも、エクスプローラーはズンズン走る。ナゼか。それは、浮いたタイヤにブレーキをかけているから。前進するのにブレーキ?? と思うかも知れないけど、これ本当の話。空転するタイヤにブレーキをかけるってことは、そのタイヤに抵抗がかかるってこと。抵抗がかかるってことは…地面に接地しているのと同じこと。

つまり、ブレーキをつかって空中に地面を作ってあげてるワケ。そうすれば、空転せずにもう片方のタイヤで地面を蹴ることができる。この電子トラクションコントロールの性能がスゴいのだ。



②ゆっくり力強く走れる
実はこのトラクションコントロール、今ドキのコンパクトSUVにもついている。でも、エクスプローラーのほうが走り易い。それはナゼか? 答えは「ローレンジ」にある。
え? ローレンジがわからない? そうだなあ…。

多段変速機のついた自転車に乗ったこと、あるでしょ? 前の大きなギアで2段変速。後ろのこまいギアで5段変速、2×5でしめて10段変速でござーい! ってやつ。あれと原理は同じ。

エクスプローラーはオートマで5段変速。でもそのミッションの後ろに「トランスファー」という変速機がついている。これが「ハイ」「ロー」2段に変速できるので、5×2で10段のギアが使えるってワケ。オトクでしょ!?

ここでもう一度自転車を思い出して欲しい。ギアを高くした時はひと漕ぎで沢山進むしスピードも出せたけど、ペダルが重たかった。反対にギアを低くした時は沢山漕がないと前に進まないけど、坂道でも軽い力で漕げたハズ。

四輪駆動車も全く同じ。普段は「ハイレンジ」だけど、「ローレンジ」のギアを選ぶと、エンジン回転数は同じでもスピードが遅くなり、トルクフルに走れるようになる。凹凸の激しいオフロードではスピードなど不要。逆にトルクが大切になるので、まさにうってつけのギアと言えるのだ。

特にこのトラクションコントロールは、「前進するのにブレーキを使う」ので、そのブレーキに打ち勝てるだけのトルクが必要。その意味でも電子トラクションコントロールとローレンジは相性がいいのだ。



③ボディーヒットを気にせず走れる。
ここで最初の写真に戻ろう。オフロードで最もイヤなことはボディーヒットして大切なクルマを壊してしまうこと。本格四駆はこの点を考慮して前後の対地アングルを大きくしたり、最低地上高を稼いだりしているのだが、最近はそんな四駆が少なくなった。

この富士ヶ嶺のモーグルを、ボディーヒットを気にせずちゃっちゃか走れる四駆も大分減ったのだ。ランクルだって、ナナマルやハチマル以降、相当に気を遣うようになっている。

実際、エクスプローラーも相当に気を遣うクルマだったのだが、試しにサイドステップを外してみたら実に理に適ったアンダーラインを持つ4×4であることがわかったのだ。



さあて、そこで本題(笑)
実は冒頭の写真、11月末に軽井沢スウィートグラスで行われた「フォード SUV ヴィレッジ」の時のもの。オフロード体験がセットになっていて、このエクスプローラーで浅間サーキット内に設定した凹凸路を皆さんに存分に走ってもらったのだ。

そして、先の①と②は、直前の座学で私がしゃべった内容というワケ。
結構充実したオフロード体験だったんじゃないかな。
この続きはまた次回!(河村)