アロッタファジャイナ・ワークショップ主宰のマツガエです。

12月4日から7日の4日間

水川あさみさん、木村文乃さん出演「太陽の坐る場所」

中谷美紀さん、大森南朋さん出演「スイートリトルライズ」

池脇千鶴さん、中越典子さん出演「ストロベリーショートケイクス」

などの、静謐な名作を撮られている監督、矢崎仁司監督のワークショップを開催します。

先日、矢崎監督に、創作の秘密や、ワークショップにかける思いなどを聞いてきました。

非常に興味深い内容となっています。

全7回のうち最終回です。


---

矢崎仁司監督インタビュー(最終回)

「このセリフを削ったとき、どうする?」

(聞き手:ワークショップ主宰・松枝佳紀)


松枝 映画って、複合的な面白味があると思うんです。ストーリーが面白い、筋が面白いというのもあれば、あるシーンの人物のたたずまいが面白いというようなこともあって、どっちが欠けて良いっていう話しではないんですが、矢崎さんの映画は、より人間の反応をすくい取るというところにウェイトが置かれているという気がします。

矢崎 そうですね。要は、「出来事」は変わっても良いんです。それはライターが机の上で書いた無限にある「仕草」のうちのひとつに過ぎないんですから。でも、そこで表現しなければいけない「感情」はひとつで、例えば悲しいということが表現したい。でもシナリオ教室で「悲しい」って書くなって言われているから(笑)、ライターは「感情」を書かずに「仕草」を書いたりするんです。でもその「仕草」なんて、机の上で考えた、いっぱいある「仕草」のうちのひとつにすぎない。もちろんその特定の「仕草」が伏線になっていて、重要な場合はそれをしなければいけませんが、そうでないときは、ライターが書かなかった、ほかの「仕草」でも全然構わない。むしろ俳優の生理からは別の「仕草」を選ぶべきということのほうが多い。たとえば、悲しさを表現する「仕草」として「コーヒーを飲み干す」と書いてあったとしても、俳優が「悲しいとき、わたしは食べます」と言えば、食べるシーンにすればいいし、「踊ります」と言えば、踊るシーンにすればいい。

松枝 僕は脚本家でもありますけど演出家でもあって、良く思うんですが、俳優が僕の書いた通りのことをしてしまう。でもこちらは、ぼんやりこういうことがしたい、というのがあって、でも、ぼんやりしたままにしてはおけないから、とりあえず一個の仕草を選んで書く。でもそこに必然性はなかったりする。ある場合もありますが。たいていはない。でも、稽古場にもってくと、本に書いてあるからって、俳優は無理やりそれをやっちゃったりする。脚本が俳優に対する強制性を持ってしまう場合がある。でも演出家としては、もうちょっと俳優側でズレてくれないかなという気持ちが起こる。なにより無理やりやっちゃうことで、それは記号に代わってしまう。それじゃ観客には小説を読んでもらえばいいじゃない、人間がやるのを見せる必要が無いじゃない、みたいなことになる。

矢崎 わかります。

松枝 いっそのこと台本を捨てて、アドリブだけで、エチュードだけで、作るっていうことは考えないんですか?僕は舞台するとき良く考えます。

矢崎 ロンドンで撮ったやつは、そういう感じで撮ったかもしれません。でも、基本、ぼくは台詞はあったほうがやりやすいですね。どういうことかというと、あれば削れるからです。俳優と「このセリフを削ったとき、どうする?」というようなことを話すことができるからです。俳優やスタッフやみんなが、これから「悲しい」シーンを撮ると判っている時に、「わたし悲しいんです」という台詞をカットしてしまう。その時、どうするか、何が起こるかということが、もっともワクワクするところですね。

松枝 ああ。それはとても良いですね。今回のワークショップではそういうことをやりたいですね。映画やドラマなんか見ていると、悲しいシーンで泣いたりする、登場人物が。うーんと思う。それが記号にならずに、ちゃんと「あり」になるっていうのはとても難しいなと。悲しいときに人間はそんなに簡単に泣いたりしない。泣く場合もあるかもしれないけど、そうか?と思うことが多い。長いストーリーの一部なので、さくさく進んで、その泣くシーンで感じた違和感は、そういうことにしたいのねと理解して先に進んじゃいますけど、本当はそうじゃいけないと思うんです。ちゃんと「あり」にして先にすすみたい。今回のワークショップで現段階ではまだなにをやるか決まっていませんけど、いま監督の言われたようなこと、本来ある台詞を削ったときに俳優がどうするかというのは非常に面白い気がしますね。俳優の力量だったり、どれだけ自分を晒せるかの勝負になりそうで面白い気がします。

矢崎 最初にも言いましたが、今回ぼくは本当に出会いたいと思っています。一緒に映画を作りたくなるような俳優さんたちが来てくれると本当に良いなと思っています。


(終わり)


矢崎仁司監督インタビュー(全7回)
その1「俳優たちと出会いたい」
その2「悩むのが監督の仕事」
その3「人を動かしたい」
その4「人物を風景の中にうずめたい」
その5「撮れなくなったと正直に告白できる現場」
その6「あなたでなければいけない理由」
最終回「このセリフを削ったとき、どうする?」



---

矢崎仁司監督のワークショップ詳細については次のURLから確認ください。

http://alotf.com/ws/ws18/