虹岡健吾の朝は遅い。
何度も鳴る目覚ましを乱暴に止め、這いずるようにベッドから出る。
春はどうも寝覚めがすっきりしない。
部屋を出て、すぐの階段を、踏み外さないようにそろそろと降りる。
ダイニング。
四人がけのテーブルに既に座っている、父。キッチンには母。
虹岡も父の正面に座り、寝ぼけ眼でふと横を見ると、テレビを見ながらココアを飲む人影。
「はよー」
お隣に住む幼馴染の、川栄李奈だった。あたまぼっさぼさに、パジャマのまんま。
「なんで寝起きなんだよ……」
「え、泊まったし」
「なんだと?」
母がくるっと向きなおった。
「二人で映画見てたら遅くなったんだよねー」
微笑みかける虹岡母に、りっちゃんも愛くるしい笑顔を返す。
そんな光景の横、微笑ましそうに新聞を読む父。
幸せな、家族の風景。
「あれ、この空気なに。このうちの子、俺よ?」
「あぁーやっぱり娘って良いなぁー!」
虹岡の言葉にまったく答えず、天井を見ながら母は叫んだ。
朝からの元気にあてられ、寝起きの悪い虹岡は、もっとベッドに戻りたくなった。
川栄に急かされながら虹岡は朝の支度をし、
寝癖が直ってないまま家を出る。
虹岡の少し前を歩く川栄の後姿は、相変わらず幼い。
高校の制服に身を包みながらも、その体型は昔のままだ。
現在、高校二年生。桜咲き誇る春。
「高校でちょっと背伸びるし!」と川栄は言い、少し大きめの制服にした。
結果、今でもぶかぶかである。
虹岡の寝起きの悪さは筋金入りで、小学生の頃から川栄に引っ張られるようにして登校していた。
服も変わり、虹岡の目線は高くなったが、関係は変わらない。
川栄は急いで歩いているが、歩幅的に虹岡の普通歩きの速度だ。
虹岡は朝の強い日差しにうんざりしながら、徐々に脳を起こす。
時刻は、午前七時頃。
高校生の登校風景がまだ見られないこの時間に、二人が急ぐのには理由がある。
手ぶらの川栄に、虹岡は訊いた。
「補習プリントは?」
「あぁーーー!! やばい!!」
川栄はきびすを返し、虹岡の家へ駆け戻る。
先行っててー! と川栄は遠くから叫んだ。
いつも朝、補習プリントを見ながらふらふら歩く川栄を、後ろから見守るのも虹岡の役目なのだ。
プリントを取り、戻ってきて+10分。
虹岡と川栄の家は高台の新興住宅地にあり、バスで繁華街まで下るのだ。
そこから電車一本で高校だが、10分のロスがあっては上手に乗り継げない。
虹岡は裏技を使うことにした。
川栄の後を追って自宅へ戻ると、車庫から自転車を引っ張り出す。
腰掛けて玄関出たすぐのところで待機。
なぜこれが裏技なのかというと、帰りの登り坂がしんどいからだ。
玄関を飛び出してきた川栄に、無言で後ろに乗るように促す。
「お、やったー!」
川栄は嬉しそうに後ろにまたがり、虹岡は軽くため息をついた。
虹岡の肩に手をかけた川栄は安全確認で後ろを振り返る。
「よし、GO!」
虹岡はポケットからスマホを取り出し、時間を確認。
川栄の補習には間に合いそうだ。
ちなみに虹岡も朝から勉強である。
虹岡は特進であるAクラスで、0時限特訓があるのだ。
川栄はIクラス(別名、哀クラス)。
クラスはAからIまで成績順で決められている。
つまり川栄は……はっきりいうと可哀相なのでやめておこう。
何度も鳴る目覚ましを乱暴に止め、這いずるようにベッドから出る。
春はどうも寝覚めがすっきりしない。
部屋を出て、すぐの階段を、踏み外さないようにそろそろと降りる。
ダイニング。
四人がけのテーブルに既に座っている、父。キッチンには母。
虹岡も父の正面に座り、寝ぼけ眼でふと横を見ると、テレビを見ながらココアを飲む人影。
「はよー」
お隣に住む幼馴染の、川栄李奈だった。あたまぼっさぼさに、パジャマのまんま。
「なんで寝起きなんだよ……」
「え、泊まったし」
「なんだと?」
母がくるっと向きなおった。
「二人で映画見てたら遅くなったんだよねー」
微笑みかける虹岡母に、りっちゃんも愛くるしい笑顔を返す。
そんな光景の横、微笑ましそうに新聞を読む父。
幸せな、家族の風景。
「あれ、この空気なに。このうちの子、俺よ?」
「あぁーやっぱり娘って良いなぁー!」
虹岡の言葉にまったく答えず、天井を見ながら母は叫んだ。
朝からの元気にあてられ、寝起きの悪い虹岡は、もっとベッドに戻りたくなった。
川栄に急かされながら虹岡は朝の支度をし、
寝癖が直ってないまま家を出る。
虹岡の少し前を歩く川栄の後姿は、相変わらず幼い。
高校の制服に身を包みながらも、その体型は昔のままだ。
現在、高校二年生。桜咲き誇る春。
「高校でちょっと背伸びるし!」と川栄は言い、少し大きめの制服にした。
結果、今でもぶかぶかである。
虹岡の寝起きの悪さは筋金入りで、小学生の頃から川栄に引っ張られるようにして登校していた。
服も変わり、虹岡の目線は高くなったが、関係は変わらない。
川栄は急いで歩いているが、歩幅的に虹岡の普通歩きの速度だ。
虹岡は朝の強い日差しにうんざりしながら、徐々に脳を起こす。
時刻は、午前七時頃。
高校生の登校風景がまだ見られないこの時間に、二人が急ぐのには理由がある。
手ぶらの川栄に、虹岡は訊いた。
「補習プリントは?」
「あぁーーー!! やばい!!」
川栄はきびすを返し、虹岡の家へ駆け戻る。
先行っててー! と川栄は遠くから叫んだ。
いつも朝、補習プリントを見ながらふらふら歩く川栄を、後ろから見守るのも虹岡の役目なのだ。
プリントを取り、戻ってきて+10分。
虹岡と川栄の家は高台の新興住宅地にあり、バスで繁華街まで下るのだ。
そこから電車一本で高校だが、10分のロスがあっては上手に乗り継げない。
虹岡は裏技を使うことにした。
川栄の後を追って自宅へ戻ると、車庫から自転車を引っ張り出す。
腰掛けて玄関出たすぐのところで待機。
なぜこれが裏技なのかというと、帰りの登り坂がしんどいからだ。
玄関を飛び出してきた川栄に、無言で後ろに乗るように促す。
「お、やったー!」
川栄は嬉しそうに後ろにまたがり、虹岡は軽くため息をついた。
虹岡の肩に手をかけた川栄は安全確認で後ろを振り返る。
「よし、GO!」
虹岡はポケットからスマホを取り出し、時間を確認。
川栄の補習には間に合いそうだ。
ちなみに虹岡も朝から勉強である。
虹岡は特進であるAクラスで、0時限特訓があるのだ。
川栄はIクラス(別名、哀クラス)。
クラスはAからIまで成績順で決められている。
つまり川栄は……はっきりいうと可哀相なのでやめておこう。