移動パン屋さん② | 英語できない資格もないパパ & 村上家の4姉妹 オランダ移住物語

朝の4時からパン屋さんの仕込みから製造、開店まで一通り流れも見せてもらい、いざ記念すべき新たな移動パン屋のデビュー当日。

 

カレーパン、クリームパン、ベーコンエピ、メロンパン等6種類×20個、合計120個のパンを仕入れいざ出陣。

 

まずはオフィス街ランチタイム。下調べで目星を付けておいた電通前の道路に車を停め、後部ドアを開いた状態で台車&陳列ケースを設置。車に看板も取り付けてドキドキしながら、昼休みを待ち構えます。

 

そして12時、昼休みに突入。電通ビルから時間差で人が出て来てそれぞれの目的のランチへ散らばって行きます。いくつかのグループがこちらをチラ見するものの全く人が寄って来ません。声をかけようにも車の周辺に人が通らないのです。

 

場所が悪いわけではありません。なぜか。皆さん最初から、どこで食べよう。何を買おうと目的を持ってビルから出て来ているのです。

 

そんな中、1人のOLさんが寄って来てカレーパン一つを購入してくれたのです。記念すべきお客様第1号!

しかし、その方1名以外は全く来ず、慌ててお世話になった電通の方と近くにオフィスがある某映画宣伝会社の方にそれぞれ電話し、状況を説明。お二方とも快く駆けつけて下さり、それぞれ10個ずつ購入してくれたのでした。ありがとうございます。

 

このランチタイム作戦は毎日続けることによってそこにいるという存在が認知され、たまに物珍しさで購入してくれる方の口コミ等で拡散され、徐々にお客さんが増えて行くかもしれないという長いスパンで育てるものだということに気が付きました。

 

ランチタイムが終わると、根回ししておいた某テレビ局の帯番組のアシスタントプロデューサーの女子に電話をし、番組のケータリング(スタッフや出演者が番組の前後につまむ為の飲食物)として、購入してもらうよう向かいました。

 

確かパンを12個ほど購入してもらえたのですが、後日電話して意見を聞いたところ、近くに別の美味しいパン屋さんもあるし、わざわざ移動パン屋から買う理由が見当たらないと手厳しい意見を頂きました。

 

今までの付き合いでしゃーなしで時々買ってもらっても仕事としてはうれしくも何ともありません。

 

残り約90個のパンを売るため、事前に当たりを付けておいた部屋数の多いマンションに向かい、1軒1軒台車で回りインターホンを鳴らして行きます。

 

1フロアで約30軒×14階建て×4棟=1,680世帯もの訪問先がある!これは早々に売り切れるのではないか?と期待に胸を膨らませながら、1軒1軒台車を転がしながら挑んで行きます。

 

するとかなりの確率でインターホンを押しても留守。もしくは居留守?たまにインターホン越しに「はい」と出てくれても「移動パン屋ですが、一度商品見て下さい」と言い終わるや否や、「いいです」「いりません」「もう買っちゃったから」となかなか販売に至らないどころか、ドアも開けてもらえない状態が延々と続きます。

 

セールスお断り!自分が反対の立場でも得体の知れない人が突然インターホンを押して来たら、居留守を使うでしょう。じわじわ嫌な汗が流れて来ます。

 

しかし、ごくたまに小さなお子さんがいらっしゃる世代の女性がドアを開けてくれ、陳列ケースのパンを見て「美味しそう」とかお子さんに「どれにする?」と言ってくれるのを神様のように感じたり、丁度お昼を買いに行こうと思ってたという親戚の集まりにタイミング良く遭遇し、まとめていくつか購入してくれたり、同じく営業回りのおばさんが買ってくれたり、同じマンションの小さなお子さんのお母さん同士の寄り合いで、この陳列アイデア最高!これから絶対買う買う!と言ってもらったりと、その都度天にも昇る様な気持ちになることが何度かあり、そこの号室をメモしながらお得意先リストを作成していきました。

 

とはいえ、確率的には留守も含めて、100軒に1軒程度の購入頻度で、更には1軒当たり1~3個程度で、大口購入はほとんどありませんでしたし、併せて真夏の作業はかなり重労働で、暑さと蚊との戦いでもありました。

 

何とか全ての部屋を回り終えるとボチボチ夕飯時に。ドアを開けて買ってくれたのは10部屋。売れたパンの数は26個。まだ半分以上残っているパンを見て、しばらくは朝昼晩パンで過ごすのかと思ったのを覚えています。

 

夜が近付き、今度は地元近くの主要駅前にゲリラ展開し、全て半値で叩き売ることにしました。いつ駅員さんに注意されるかヒヤヒヤしながら、電車が到着する度、駅から出て来るお客さんに向かって「美味しいパンが半額ですよ~!」と叫びます。

 

19時から22時頃まで粘ってほとんどのパンを売りさばくことが出来ました。収支はマイナス1,600円。ガソリン代は別。長い長い1日でした。

 

まだ始めたばかりだというのと、これを続けていけるのか?という葛藤が頭の中をグルグル回る中、家に帰り子ども達の寝顔を見て、がんばろう!と思いました。

 

別の案件の兼ね合いでパンの移動販売は週3回に設定して、オフィス街のランチタイムはやめて、販売先のマンションの開拓に力を注ぐことにしました。

 

マンションの新規開拓は管理人さんとの戦いでした。管理人室で止められ、販売許可がおりません。管理人さんにパンを配って買収出来たところもありましたが、大抵はアウトでした。

玄関がオートロックのマンションが主流で、管理人さんが常駐しておらず出入りが容易なマンションが意外に少ないことも知りました。

 

そんな日々の中、だんだんと確実に買ってくれるお得意先も徐々にできて来たり、お義父さんの知り合いの紹介で、食品宅配業者の会社を紹介して頂いて、従業員さん達に週1回販売させて頂いたりしましたが、1日80~90個程度が続き、収支も1,000円前後と労働時間とのバランスが全く合いません。

 

絶対買う買うと言ってくれてた主婦もタイミングが悪いのか何度行っても留守だったり、お金にならないのももちろんですが、仕事自体の楽しみが見出せず、段々苦痛になって来てしまい、1ヶ月ほどで、いつやめようかと考えるようになってしまいました。

 

自分の甘さを痛感していた矢先の9月初旬。第3子となる女の子が生まれました。

 

 

 

 

 

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