妄想通信より最新の妄想ニュースをお伝えします。

 

抗生物質の適正な使用を促すための法案が衆参両院で可決されました。本法案は、薬剤耐性菌による度重なる被害を受けて策定されたもので、抗生物質の使用に対して厳格な基準を定めています。今後、抗生物質ごとに年間の競争的使用枠が設けられ、全国の使用希望者同士でこの枠を奪い合うことになります。使用枠の配分には確率オークション方式が採用される見込みです。専門家に話を伺いました。

 

専門家「ええ、確率オークション方式というのはですね、まず使用者が抗生物質の『使用計画』なるものを厚労省に提出するわけです。使用計画を提出する際には、競争的使用枠をこの金額で買い取りますよという料金も一緒に支払う必要があるんですね。ちなみにその料金は使用枠を獲得できなくても返還されません。そこで支払われたお金は製薬会社に配分されて、新規薬剤の開発に充てられるという仕組みです。そして厚労省は使用計画に基づいて、独自に定めたアルゴリズムを使いましてですね、その使用内容がもたらすであろう耐性菌発生のリスクを定量的に推定すると同時に、支払われた料金が薬剤開発に寄与する比率を数値化するわけです。こうやって使用計画に通信簿みたいなものをつけて、順位の高い方から枠を配分していき、枠が埋まったら終了と。」

 

また、使用枠自体の算定にも統計処理が使われることになります。

 

専門家「例えば、今年はこれだけの量のバンコマイシンを日本全体で使っていいですよとか、リネゾリドはこのくらいの量にしましょうとか、セフタロリンはもうちょっと多くてもいいですねとか、そういったことも厚労省のアルゴリズムが決めるわけです。同じ薬剤をずっと使い続けると、それだけ耐性菌が発生する確率は増えてくるわけですから、当然使用枠というのは毎年毎年徐々に減っていくことになるんですね。」

 

誰が生きて誰が死ぬべきかという判定が、アルゴリズムによって日常的に行われる‥そんな未来がすぐそこまで来ています。

 

※これはフィクションです。