福島第1原発の事故を受けて原発政策のあり方を問う声が高まる中、新興国には明確に原発推進を掲げる国が少なくない。トルコもその一つで、経済成長や人口増による電力需要の高まりに対応するため、原発建設に向かわざるを得ない同国の事情を探った。(トルコ北部・シノップで 大内清)
トルコ最北端の港町シノップ。冷戦時代は対ソ連情報収集などを行う米軍基地が置かれたこの町の郊外に、日本が受注を目指す原発建設予定地がある。
「原発には絶対反対。でも、残念ながら同じ考えの人はこの町でも少数派よ」。シノップで生まれ育ち、環境保護団体グリーンピースにも参加するブシュラ・ギュルドゥズさん(24)は、福島原発の事故後も「(シノップでの)原発建設の流れは止まらない」と感じていた。
ブシュラさんは、旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発事故が起きた1986年生まれ。黒海をはさみウクライナと向かい合うシノップの住民には、放射能汚染への恐怖が今も強烈な記憶として残る。それでも観光以外に産業がなく、冷戦後に米軍が去ってからはさらに苦しい経済状況が続く同町にとり、原発やそれに伴う地元活性化策への期待は大きい。
トルコは現在、発電の7割超を火力でまかなっているが、主力である天然ガスは大部分が輸入頼み。一方で経済はおおむね順調に推移し、29歳以下の若年層が人口の半数以上を占めることから人口の急増も見込まれる。電力需要は今後10年で倍増する見通しで、安定的な電力供給源の確保が喫緊の課題となっている。
こうした中、トルコでは南部メルシンでロシアが建設する原発が2017年に稼働予定。19年にはシノップ、23年にも3カ所目の建設を目指している。
福島第1原発の事故後、トルコが加盟を目指す欧州連合(EU)では、ドイツなどが「脱原発」にかじを切った。しかし、トルコのエネルギー天然資源省高官は「トルコは、原発大国フランスから電力を容易に輸入できるドイツなどとは事情が違う」と指摘する。
中東ではヨルダンやエジプトでも原発導入計画が進む。世界最大の産油国サウジアラビアも今月、20年後をめどに原発16基を建設する計画を発表した。原発事故とはかかわりなく、各国は「電力確保」という命題に向き合わざるを得ない。
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