(前回までのあらすじ)

何を考えているのかわからない、常にボケーっとした男、M。

彼と同じ職場になった私は、先輩職員Hさんと出会い、新人歓迎花見という彼と初めて絡む機会に遭遇したのだった。


H先輩のイジり、開始。
彼は、Mが酒を飲んだらどうなるかを見るために、この集いに来たのだ。

「Mくん、カラオケの18番、なんなん?」

「えーっ、そんなんないですよ」
何故か照れたように答えるM。
(ていうか、そこ照れるとことちゃうやろ)

しばらく私とH先輩とで話をしていると、彼はいつの間にかさっきいた場所とは違う所に、移動していた。
そのへんにいた子供と、キャッチボールをしていた


しばらくして、飽きられた。

彼はずっと、単独行動。

会が始まった。
Mは主催者側から提供された弁当を立ちながら食べていた。

…ビールも、飲んでいた。

「僕、お酒弱いんですよ」
H先輩の質問に、彼はこう答えた。

一人弁当を食べる、M。
そこでH先輩、再びイジる。

「あの女の子のところに入って、話してこい。ジュースついできっかけ作ったらええねん」

花見会場には新人の女の子グループが、三つほどあった。

M、先輩の言う通りに、突入。
意志を持たないロボットテロリストM、女の子グループの横に、弁当とジュース(2リッターのペットボトル)を持って座る。

遠くから眺める、H先輩と私。
5分経過。

1分に一度、ジュースを飲んだりついだり、Mは繰り返している。

その横に、厨房の新人職員(20代半ば)がいたので、意を決して彼は突撃した。

何か話をしている。しかし、話を聞き流されているような様子。
他の女の子は、相手にしていない。

しばらくして、赤ら顔になったMが我々のところに、帰ってきた。

「よし次は、あっちのコらに絡んでこい」

リハビリ関係や検査関係職種の女の子の輪に、M挑む。

…全く、相手にしてもらえない。
早くも彼は、仲間を失った。

しかし、我々には仲間がついた。

OさんとFさん。
Oさんは違うフロアの、Fさんは私と同じフロアの、介護の女の子たちだった。

言い忘れていたが、Mも介護職員である。
ソーシャルワーカーを受験し、結果待ちの26歳。

OさんはMにかなり興味があるのか、H先輩に彼のことを色々聞き、笑っている。

「あいつに[メモをとれよ]って言うてんねんけど、何書いてるんかわからへんねん。そのメモ帳を、ナースステーションに置いたままにしとうし」
H先輩の話の一つ。
Mの怪行動の数々に、一同爆笑。


Mは、顔も目も赤くなっていた。

ビール一杯で、ベロンベロン。


いつもよりハイテンションな彼の空回りっぷりを見て、会は終わった。


(続く)