「火花」で有名になった又吉さんの作品”劇場”を読んでみた。
読む前に・・・
どこかで、”吉本興業の芸人が書いた作品”として見下していたところがあった。
プロじゃない、”準プロ”でしょ?”質の高いアマチュア作品でしょ?”って捉え方かな。
それも踏まえて、どこまで描けるんだろうって
超上から目線の視点から読み始めた。
ところがどうだ。
読み終わってから、謝りたいくらいですよ、又吉さん。
感動の言葉で済ませたら、もったいない程の感情で包まれている。
鉄は熱いうちに打てじゃないけど、ブログに感じた思いを綴ろう。
まず、印象に残ったシーンは2つ
2つともに共通するのは主人公の感情が”自分でも感じたことあるような感覚”であったこと
過去に感じた実体験を言語化したのかと思うくらい。
1つめはサキ(彼女)が帰ってこなくて、バイト先の同僚から”店長と一緒にいるはず”と伝えられた時
今まで、自分の思うようになっていた彼女。
言葉で言うならば”いいなり”であった彼女が
自分の意思で、腐敗したつまらなくなってしまた日常から、変化を求めた事に気付いた時だ。
あるよね。わかるよ。
価値があるモノだからこそ、変化しなければ維持できないのはわかってるのに
変えたくない、変えれない日常があるんだよね。
押し迫るような切迫感があるシーン。ドキドキしながら読んだ。
2つめはラストのシーン
サキ(彼女)が実家に帰り、体調も戻ってきたところで
二人の思い出の慣れ親しんだ東京の部屋で荷物の整理をするシーン
思い出の台本を思いふけりながら読み始め
二人の現状の関係とダブりはじめてきたところで
主人公の永田がアドリブでサキの本心を探るようなセリフを読み始める
もう終わった
もうなんだ
二人は変わった
そんな事はわかっていても
永田は離れ離れになっても
今まで叶えられなかった考えられるありったけの希望を彼女につたえる
そこで物語は終わりました。
正直、変わってしまった相手と変わらない相手の溝は埋まらないと思ってる
この先二人が戻ってハッピーエンドで終わるのかなー
あとがきで又吉さんも書いてたけど
元に戻りたいと思っていても、自分だけでなく相手が変わってしまっていたら
元には戻れないんだよね
せめて、新しいカタチを探すしかないのかなってとこ
まぁ僕の経験上、うまくはいかないと思う
27歳と具体的な年齢が出てきたが”青春”を超えた関係になったので
後に戻れないところはあるが・・・
総評
主人公のダメさも含め、自分とダブってるところが共感できた
人間臭さが、丁寧に綴られた物語だなと。
脚本家の設定なので、とにかく言葉が流暢。
共感できる反面、羨ましい、尊敬する才能も。
あらためて、感覚で捉えていたことを言葉のフィルターに浸すと
こんなに世界観が広がるんだなっと感じた。
ありがとう又吉さん。