【さかなのこ(主演:のん / 監督:沖田修一)】

 あの"さかなクン"さんの半生を描いた映画を主演さかなクン役にのん(能年玲奈)と言う、トンデモっぽい作品。
 でも観た各所から「良かった」の声多数なので、興味湧いて観に行きました。

 いや〜良かったです。
観た方は感動の声も多かったのですが、自分は感動成分はそれほどでも、その代わり『今の日本で1番誰もが楽しめるのは、この映画じゃないかな』と思いました。そんな奇跡のバランスを感じたと言うか

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 さかなクンさんって、僕らロスジェネ世代からすると『絶妙なヒーロー像』なんですよね、(と自分は思ってます)
 映画内でもそんな描写はありますが、「1歩間違えば周りから変人扱い」「TVチャンピオンで有名になるが、その後長い間変なキャラの人の認識」
 ただ、ずっとずっと魚が好きで魚と真摯に向き合って、本当に魚類学者になって、名誉博士になって、世間の人も少しずつその本当の姿を知って。

 将棋の羽生さんや野球のイチローの様な"才能""天才""やり手"なカッコいいヒーロー像が取り沙汰される中、周りに言われることなんて振り回されず、ただただ自分の好きなことに向き合い長い時間をかけて夢を叶えていく
 成果主義だったり、"うまく"やらなきゃいけない呪縛の多かった自分には、少しずつ少しずつ、さかなクンは輝いて見えていく存在でした。

 なので、その辺りをエモく描いて涙腺にくるかと思いましたが、映画の雰囲気も丸ごと、さかなクンの醸し出す空気感みたいに「いや苦労とかしてないよ、大好きなお魚さんのことをやってただけ」と言わんばかりのオーラで包んでいました。

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 その雰囲気をつくり出したのが、主演ののんさんでした。ヤバいよ、もうこの人の女優力
 映画冒頭に『男か女かはどっちでもいい』って出てきてスタートですし、多分男なんだけど、髪の長さとかメイクとか服とかわざとどっちでも良い様にしてる、そして演技・雰囲気が見てるうちに"男とか女とかはどっちでもよくて、この人物であることを表現している"
のんちゃんにしか出来ない

 インタビューでのんさんが「最初、お話をもらった時、『自分か!?』って思ったけど、自分が断ったら他の誰がやるかなって色々考えたら、『自分だな✨』って思った」と言う、溢れ出すオンリーワン感エピソードが大好き。

 周りの役者、脚本もコメディタッチと雰囲気がホントに良くて、今時珍しい『結局みんな良いヤツ系』それでいて忖度とか配慮感を感じないのが奇跡のバランス。  

 現実にはどうしても多様性とか、世代間分断があり、『誰かのプラスは誰かのマイナス、どこかのマジョリティは別のマイノリティを図らずも非難する』になりやすい今の時代に、
 さかなクンのキャラクターと(それは深い意味で)のんちゃんのオンリーワン演技とスタッフみんなの作り出した空気で、年配の方から若い子まで、小さい子どもも、色々な所でそれぞれ苦労している誰も彼もが観て楽しめる映画じゃないかと思います。