父上暗殺事件から月日が流れた
義信「せああ」
卜伝「ふん。せあ」
義信「はああ」
卜伝様の木刀を弾き飛ばした
卜伝「参りました。いやあよく成長なされましたなあ義信様」
儂はこの頃元服をし名を菊童丸から義信と改めた
義信「それは卜伝様が手加減してくれたからです。もし卜伝様が本気を出していたならば私は今頃肉塊になっていた所です」
卜伝「相変わらずの謙遜ぶり過信や過大評価をしないのは立派てすが過小評価し過ぎるのもよくはありません」
義信「卜伝様そのお言葉しかと胸に焼き付けます。それと卜伝様私の事を様付けしてはなりません。私にはもう権威など手に入らぬのですから」
卜伝「申し訳ござしません。しかし立派になられましてまるで義輝公を見ているようでございます」
義信「まだまだ私は未熟者ですので。卜伝様少しお話があるので宜しいでしょうか?」
儂は卜伝様の家に移動した
義信「卜伝様。これより私は流浪の身になり自分の主になるべき者を探し仕官したいと思います」
卜伝「成程もうその様な時期でございましたか。刻が経つのは早いですなあ」
義信「私に何が成し得るのかはわからない。全く役に立たないかもしれません。ですが私の天命がこれから出会う人々これから散らすもの散っていく者の想いを紡いでいく事が私の天命であるのならば私はここから旅立つ必要があるのです。お許しいただけないでしょうか」
卜伝「許すも何もありませぬ。義信様の思うがままお進みあれ。この卜伝その道程を邪魔立ていたしません故」
義信「有難うございます」
卜伝「ならばしばしお待ちを」
卜伝様は席を立ち奥から何かをもって戻ってきた
義信「それは」
卜伝「覚えておいでのようですな」
義信「それは二条城で私が選び父上から譲り受けた太刀」
卜伝「これは天下六剣の一つ紡がれでございます」
義信「紡がれ。しかしそれは…天下六剣の一つ私などがもってよいのでしょうか?」
卜伝「気に病む必要はありません。紡がれは貴方様を選んだのでございます」
義信「私が…選ばれた」
卜伝「刀というのは不思議な物で人を選ぶのでございます。選ばれてない者が使用しても刀の威力は発揮出来ないのです。それはどんな達人にも出来ません。義輝公もきっと紡がれを選ぶであろうと申しておりました」
義信「父上が…。わかりました。天下六剣の一つ紡がれ慎んでお受け取り致します。この太刀に恥じぬ武士なります」
卜伝「しかと聞きました」
儂は卜伝様から紡がれを受け取りその重みをしっかり受け止めた。それはこれから儂が背負う重荷一つである事を訴えているようだった
卜伝「それともう一つ」
義信「名前ですね」
卜伝「わかっておいででしたか」
義信「今の私に権威が手に入る事はございませんが。それでも将軍の子である事は変わりません。私は素性を隠す為足利の名を捨てねばなりません」
卜伝「義信様には敵いませぬな。して名前は決めておいでですかな?」
義信「此方に」
卜伝「開発…聡」
義信「はい。人の想いや意志を紡ぐ糸を開発し聡明に乱世を生き抜くという意味になります」
卜伝「貴方様に相応しい名前でこざる。義信様いや開発聡殿貴方様の思うがまま心の赴くままお進みあれ。この卜伝ここ鹿島より開発殿の吉報楽しみにしておりますぞ」
開発「卜伝様今までお世話になりました。開発聡出立致します」
こうして儂はは鹿島を旅立った
最初に目指すは駿河
儂の長きに渡る戦国時代が幕を開けた
第一話 我開発聡 完