結局婆ちゃんが住んでいたこの家は長女一家が住んでいるらしい。
田舎だけあって広い。
4世帯にそれぞれ部屋が割り振られるのだが…
あいにくマサノブはそのどこにも属していないまま来てしまった異物。
俺は暗い部屋のコタツで焼酎を一人飲んでいた。
そういや周りが寝静まった正月。
MASA「…そういや婆ちゃんも一人で飲んでたな。みんな寝た後に…」
結局葬儀にもでなかった俺には実感が湧かない。
MASA「それよりどいつもコイツも嫁ブッサかったなぁ〜」
考えがまとまらない俺はこの後どうしていいかもわからない。
泊まる予定では無かったのでパンツすらない。
何となく風呂に入り、今夜の寝床であるコタツに戻ろうとした時だった。
子供の泣き声がした。
兄嫁「ホラ!いっといで!」
甥っ子「ンビィィィァアァァア」
トイレに促す兄嫁…そしてその子供…
つまり俺の甥っ子がいた。
どうやらこの家の便所が怖かったらしい。
MASA「ああ………」
急に記憶が蘇ってきた。
俺も子供の頃ここの家の便所が怖くて泣いた覚えがある。
夜は暗くて知らない場所でビービー泣いていたのだ。
MASA「俺の…俺の甥っ子か…」
この子からしたら俺はとんでもない怪物にでも見えているのだろう。
本当に小さい頃…
そして昨年兄貴の家に凸した時に会っているが、
よくわからない知らないデッカいニンゲン。
そして…
自分の父親や爺ちゃんの敵…
親族に囲まれた楽しいお正月をぶち壊した悪魔…
俺はきっと憎くて怖い存在なのだろう。
トイレから出てきた声がする。
兄嫁と一緒に部屋に入る。
冷蔵庫のお茶が目当て。
兄嫁「あ。マサノブくん。」
MASA「……あ…へへ」
深夜に「マサノブくん」だって…
なんという淫乱女だろう…
甥っ子「……ビクッ!」
MASA「お…おぉ。◯◯。早く寝るんだよ?」
甥っ子「うん」
ビクついていた甥っ子だが声をかけたら急ににんまりと笑い…
そして母親にくっついて部屋に戻る。
淫乱女「ほら。おじちゃんにおやすみなさいは?」
甥っ子「おやすみなさい!」
…
心が…
心が締め付けられた………
俺はここにいてはいけない。
俺は…
俺だけは絶対にここにいてはいけない存在なのだ!!!
俺はセブンイレブンへと走り出した。
購入したのは…お年玉袋である
人生で初めて…俺は人にお年玉をあげる決意をした。
甥っ子。
まだ赤子の姪っ子。
そしてクソムカつくイトコの子供達にも…。
漢気の極みッ
なんと袋に1,000円ずつブチ込んでいるのだ
きっと後悔する。
多分…
絶対……
わかっているが…今俺はそうするべきだと…
そうするべきだと心から思っている
交通費4,000円
手土産の酒1,500円
お年玉4,000円
パンツとお年玉袋
とんでもない出費である。
支払い足りないから来たのに…。
子供の無垢さにあてられてしまったのだ…。
金を借りに来た田舎で…
人の心を取り戻しました。
MASA「って違えぇぇええええ」
本当に危なかった…
危うく真人間に堕ちてしまうところだった…
甥っ子眺めて優しい気持ちになりに来たんじゃねえぇぇぇんだよ
俺はゲロ兄嫁の「マサノブくん」で思い出しハードオナをかました
明日金借りるならヨウイチおじさんだな。うん。