吉田MASANOBU(34・牡)
35回目のBIRTHDAYまであと四日。
さすがに最近危機感がすごい。
俺の人生はこのままではいけない…。
って言ってももう終わったループだからさ。
だからこの際。
今回のループでは自分のやりたかったこととか。
そういうの恥も外聞もなくやりまくって。
何かを失うことを恐れず、とことん自分のやりたいことをやりたい放題やりつくしてやろうって思う事にした。
もう人と比較してみじめになって、そのくせなにもしないクソ人生におさらばだ。
こっから先。
今回の人生ループでは俺のやりたいことをやりたいだけやりつくしてやるんだよ。
35歳の誕生日から俺は生まれ変わるというか。
世を捨てる。
自分に嘘をつかない。
さて…。
でも俺は何がしたいんだろうか…。
アニメ!風俗!ギャンブル!酒!タバコ!
………
じゃなくて…
何がしたいんだろうな~…。
こういう時今までの俺は
「人より上になりたい。金持ちになりたい。」
って利己的な事ばっかり考えて、
そうなれない自分に嫌気がさして…。
でも幸せって金と家だけじゃねーんだよなあ。
必死に働いて金貯めて、
その金に群がる女に現ぬかして、
メーカーの素敵なCMに乗せられて貯金を流し、
最後は遺産のために家族に「早よ逝けや…」と思われる。
それって幸せかなあ…。
俺のじいちゃんは私鉄に努めていた。
頑固で真面目な典型的日本型ジジイ。
婆さんとは本当に仲が悪く、自分の娘(俺の母)とは大げんかばかり。
定年後は家にいるのに一人。決して幸せそうには見えなかった。
死んだ後に婆さんが言った。「やっと肩の荷が下りた」。
真面目に家庭を築いて、家を買って、専業主婦と子供を養った末路がコレか…
俺はそう思った。
俺には競馬仲間がいた。
お互い名前も知らなかったが、学生時代WINS新橋で毎回会って予想に花を添えたオッサン。
いつもハンチング帽みたいなのをかぶって、茶色の縦ストライプが入ったヨレヨレのシャツ。
サンスポを尻ポケットに突っ込んでいた。年齢は…50…いや60代だろう。
「ホレホレ!!!柴田!ホラ!!!ホラ!!!きたよきたよ柴田ホラ!!!」
誰よりも騒ぎまわっていた。
いつも隣にいて、俺も
「よし!よし!完璧だ!言ったとおりだ!っしゃ!!!メン!!!」
って発声しながら競馬してたので、なんだかんだ挨拶するようになっていった。
忘れもしないのはいつだかの七夕賞。
オ「オウ!今日どうだ!」
M「うっす。今来たところです。」
オ「俺今日は絶好調でよ~!ホラ!5レースからコレだろ?コレだろ?」
新聞の印を見せてくるオッサン。
M「七夕賞何でいくんすか?w」
オ「これは難しいけどさあ…9番だよ!」
ミヤビランべリだった。
人気薄。俺は震えた。
そして俺は震えた手で、無言で新聞をひっくり返し、七夕賞のページをオッサンに向けた。
俺の赤いサインペンは前日、ミヤビランべリに◎を付けていた。
オ「おお!一緒じゃねーか!!!こーりゃ不安だなあwwwwww」
なーんていうもんだから「オイ!www大丈夫ですからwww!」と返した。
友人の少なかった俺だから、こんなに息の合う人もなかなかいなかったように思う。
さあ直線。
本当に今でも目に、いや心に沁みついて離れない光景。
逃げるミヤビランべリ。
もう言葉か奇声かわからない。叫ぶ俺とオッサン。
残り50m。「残せ残せ残せ!!!!!!!!!!」二人の強烈な叫び。
…っしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
オッサンは単複。俺は馬単と馬連を当てていた。
ウインズでハイタッチしたのはそれが最初だった。
それからも俺とオッサンはちょくちょく会ったが、
いつの間にかその回数は減り。
七夕賞から一年もしない間にオッサンは来なくなっていた。
どうしているんだろうか。
もう十何年も前だ。年齢を考えたら…
今も変わらず元気…とはいかないだろう。
ああ………
なんの話だっけコレ…。。。。。。。