始まりの終わり。
そして新たなる終わりの始まり。
今日は昔の話を。
仕事中のパチがバレてからの俺の壮絶な人生をここに書き記したいと思う。
俺はどこにでもいる平凡な人間だ。
ただ人より少し太っていて運がないだけ…。
ただそれだけなんだ…。
【MASA】
年齢:秘密
性別:男
職業:団体職員
給与:手取り18万J
学歴:マーチ大学院卒
前職:大手外資系
20代前半から不幸によるローンを重ね400万程に膨らむが2018年10月、生前贈与で500万Jをゲット。キャッシャングを全額返済する。
2019年春にショップリボを残したまま贈与金が底をつき涙。
馬券大的中→買い間違え・ウイン5鼻差逃しなどJRAに完全に狙われる。鼻差勝率5%。
ここからが本題。仕事中にパチがバレで無断欠勤をしてからの話だ。
無断欠勤も5日目になると連絡が来なくなるものだった。
学生時代のバイト初日、寝坊して全スルーした時。
大手外資をパワーハラでぶっちした時もそうだった。
世の中とはそういうものなのだ…。
『今後どうしよう…。俺は何でいつもこうなんだ…。』
また派遣生活に戻る恐怖・そして自責の念は確かに、確かにあった。
だが…心のどこかに高揚感もあったのだ。
冒険に出る前のような、夢を追って上京してきた田舎ガールのような…。そんなワクワク感が心のどこかに。
今後どうやって冒険しようか。どうやって生きようか。考えると胸が躍った。
無職生活では試食コーナーお遍路や自販機行脚などでサバイバル生活をしてきた。
あの辛くも、毎日必至で少しの事に感動できる日々が待っていると思うとワクワクせずにはいられなかった。
だが…。そんな高揚感は一瞬にして砕け散ることになる。
~無断欠勤6日目~
ピーンポーン!ピーンポーン!
小うるさいチャイムに起こされる。
「っっなんだよ…朝っぱらから…。宅急便か?」
今のマサにとって11時は朝だ。
バタバタと足音がする。そうか家に今日は母親がいた。
もう一度布団に潜り込む。
ここからが男のモーニングルーティンだ。
布団の中でゴソゴソとXなビデオサイトを閲覧し霊気を高め、家出少女ものの漫画をWEB視聴し妖気を練り上げ、最後は脳内編集再生で自慢のコンボイを布団にこすりつけフィニッシュをかます。
「さてと」
本日も臨戦態勢に入るマサ。
しかし…
ガチャリ!急遽部屋に来た母。
慌てて布団内でズボンをはきなおす。
(なに急に開けてんだこのっ!!!)
抑えようのない苛立ちで睨むと母親が言った。
「マサ。会社の人?いらしてるんだけど」
血の気が…
体内の血が一気に冷気を帯びた。
隠れるか…逃げるか…頭が回らない………。
浮かれ気分と高揚感は慌てて身を隠した。
真っ白な頭の中。ジャージ。ぼさぼさの頭。伸びきった髭。
何も考えられない中…。
ただ真っ白な頭で玄関へと向かった。
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虚ろな目。上がる心拍数。停止する思考。
ただ早くこの恐怖から逃げたかった。早足で玄関に向かうと二人の男がいた。
事務長と副理事だ…。
「…あっ…あの………」
言葉が出なかった。
無表情の二人は一度目を合わせ、口を開いたのは事務長の方だった。
「外で話そうか。」
着替えを済ませ外に出る。
駅前の喫茶店だ。
「コーヒーでいいか?」
副理事がいつも通りの話声で聞いてきた。
無言で頷く。
礼儀正しくした方がいいのか、普通に接したら…マズいよな…。
どうしたらいいのかわからない。
クビくらい余裕で覚悟してる。
してるんだけどさ。そうじゃなきゃ無断欠勤なんてしないだろ。
でもこうして目の前に立つと今すぐ絶叫して逃げたくなる。
自分の恥ずかしさと恐怖と気まずさに押しつぶされそうになりながらただ無言でコーヒーを待つ。
「お待たせしました~」
アイスコーヒーが三つ。
副理事はタバコに火をつける…。
コーヒーを受け取る俺の手は震えていた。
窮地…。終わり…。終わり終わり終わり終わり終わり…。
もう俺は終わった。人間として。
ああもうダメだ。
何を言っても。
ここまで来たらキレ返すか徹底抗戦か?
それとも。狂った感じをしようかな…。
狂ってしま………
ん??????
そうだ…
それだ!!!
急に頭が覚醒し始めた。
この現代社会の鉄則を思い出した。
まさにこの職場で…この職場で学んだ唯一の事。
『困ったら被害者になれ』
である。
院卒モードオン。
大手外資の面接をくぐり抜けたあの能力が完全に目を覚ました。
事務長「さて…どうしたのかな」
ついに事務長が口を開いた。
冷たい目、厳しい目、こちらに向ける悪意。
だが見てろ。その悪意。俺への哀れみに変えてやる!
完全に頭が覚醒していた。
マサ「あの…あ…あ……」
黙り込む…詰まる…。
事務長「聞いてる?この一週間出勤しない、連絡も出ない。なんでか聞いてるんだよ。」
(は?コイツ生意気だな?ぶっ〇ろてやろうかな?お?)
と思ったがそこを堪えて俺はただ下を向いて黙る。
事務長「みんな君の仕事もフォローした。心配もして電話もした。会員の皆さんにも迷惑をかけた。なんでそういうことになったか。社会人として自分がどういう行動をしているかわかってるのか?ねえ?」
(「聞いてる」とか言いながらよく喋る野郎だな。アホか)
事務長「何?仕事辞めるの?だとしてもだよ。連絡もなしでこういうやり方はないんじゃないの?事故かもしれないしさあ。皆どれだけ心配したか…」
(今タバコ吸ったら怒られるかなあ…。でもコーヒーにはタバコじゃん?灰皿出てるし…どうしよ…)
副理事「まあまあ、とりあえず本人の話聞こうよ」
(いやそれよりタバコ吸いたいんだが)
(まあいい。本気魅せたるか…)
さてここからが本気のパフォーマンス。
マサ「…あの…。。。わからない…です……。あのごめんなさい……」
ここで必殺のキラーWord
マサ「自分でもわからないんです………。。。」
マサ「わからなくて…行かなきゃ……ってわかってたり…電話しなきゃ…って。。。でもなぜか…その急に吐き気がして…ック!その…ううッェ!涙が出たりして!!!朝…駅まで行ってもなぜか!何故か………っくうう」
我ながら迫真である。
恥も外聞もないちょっとデカい声で周囲に聞かせた。
二人は無表情だが…コレは驚いた様子を隠してるなwww
しかもホラこれは自分たちが「パワーハラスメント」のレッテルを貼られる事にビビってすらいるwwwwwwwww
説教の刃を折り、保身と反省のダメージを与え同情の剣で切る。
コレが!コレが俺の奥義!!!
滅びのヴぁあああああああああああストストリームううううううううううう!!!!!!!!!!!!
あとは下むいときゃ勝手に奴らのダメージは削られていく。
完全勝利の瞬間であった。
事務長「そうか…。今後どうするんだ。続けるのか?」
マサ「…続けたい気持ちはあります…でも自分でもわから……っく!!!」
副理事と事務長が見つめ合う。小声で話し合う。
いやでもそれはそうとタバコ吸いたいんだよなあ…。
数分話し合った後。
ついに事務長が俺に切り出した。
事務長「吉田君。まずは病院にいきなさい。」
マサ「病院…ですか…???」
勝った!にやりと笑うマサ。
その上で仕事をどうするかは検討するなど曖昧な答えで解散。
最後はなんか優しい言葉をかけられた。
なんか本当に少しだけ涙がでかけた。
わざわざ家の外をチョイスしてくれたこと、
こんな無断欠勤侍に情けをくれたこと。
本当にいい人たちだと…思った。
そしてそれ以上に
「今月の給料とここのコーヒー代どうなんの?」
という思いがほとばしった。