1月7日朝。
俺は事務所にいた。

開けてはいけない机の棚
開けてはいけないカギ
開けてはいけない箱
開けてはいけない封筒
開けてはいけない人としての蓋

全てを開いた。

手には一万円札が握られていた。

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ボンヤリとした意識から覚めるとリサがチョコンと部屋に座って何か考えている。
彼女も今後のプランについて考えるとのこと。
昨日の会話はこうだった。
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「と、言うことで目標金額は5万円にします。」
「はぁ。まあいいんだけどもうお金無いに等しいわよ?というかもう無いと考えざるを得ないレベルじゃない。」
「そこは…まぁ明日なんとかします。」
「え!?なんとかなるの?」
「ま…まぁ1万くらいなら…」
「ハァ〜〜〜…。また足りないじゃない。どうするのよ?」

フフッ。と俺は不敵に笑ってリサを見た。
そして告げた。

「パチンコさ!!!!!」
ウインクして親指を立てる俺にリサの重い拳が衝突した。
「同じパターンじゃないのよぉぉぉーーーーー!!!!!」
頭をブンブンと振っているリサ。

「ところでリサ。高知に着いたらお前は家に寝泊まりできるのか?」
「それは無理。私の家であって今の私の家じゃないから」
「どういうこと?」
「ん…追って説明するわ…それより辿り着かなさそうだけど。」
相変わらず大事なことをボンヤリとさせやがる。
とりあえずわけはわからないが、宿代は二人分ってことになりそうだ。

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そして本日に至る。
俺はリベンジのリベンジ。
パチ屋にいた。
5万円。可能性を模索する。
しかし絶対に返さなくてはならない二万円もある7万必要なのだ。

①ジャグ
当たりは引けるが7万は届かない。3500枚は無理だ。
②牙狼
ラッシュ突入率は悪くない。だが転落がある手前長継続には期待ができない。17,500発はどうか。
③アリア2
当たればラッシュ突入だが全く続かない。厳しいか
④ひぐらしのなく頃に2
ラッシュは51%しか突入しないが大当たりがデカい。7連すれば…。

俺はひぐらしに座った。
現金を投入する手が震える。
リサの事もある。だがそれ以上にこの金の出どころはヤバい。
震える手を片手で抑えた。

そして息を吐く。
さぁ
500円…
1000円…
1500円…

ブルブルブルブル!ペロン!

ハンドルが突如震えだしたのだ!
慌てて球を止めた。
けたたましい音と光。
リーチである…

が。
ポン。

ノーマルリーチで外れた。


【嘘だ!!!!!】
激アツの嘘だ擬似連だ!
二度目の擬似連にも成功しさぁリーチ。
その時だった。

ボタンプッシュ。

そして
【次回予告】

保留は赤に。
発展先は…最強リーチ。VSレナだ。

回るボタン。変わる曲。赤い文字。

ドキドキドキドキ。
期待はしているがそんな事よりも恐怖。
外れたら…終わるその恐怖。
「頼む頼む!頼む!」

なんでもいい当たって。当たってくれよ!
かかってるんだ。全部が!!!

最後の思いを乗せて。俺はボタンを押す。

「スーッ。………
行くぞおおおおおオォォォ!!!!!」


ガチャん。

外れた。

目の前がまた暗くなった。
倒れそうになった。
何も見えない。聞こえない。
ゴメンリサ。そしてさようなら。あと本当にゴメン。

【嘘だっ!!!!!!!】

台は叫んだ。応えた。

目の焦点がボンヤリと戻ると。
図柄が揃っていた。

もう興奮しすぎて曖昧だが無事にラッシュに突入したその後はフェスティバルであった。
掴む未来。
目標が一歩づつ見えてきた。

リサが待っている。
俺を信じて待っている。
そう思うと強くなれた。

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俺は絶対に返すべき金を返すべき場所へと戻し、少女の待つ自室へ戻った。
手には小さなコンビニケーキ。いちごの乗ったショートケーキだ。

ガチャリ
「リサ!やったぞ!!!」
「吉田!ど、どうだったの!?」

ふっふーん、と笑いながら俺はサイフを開けて少女に見せつけた。
「ホラァァァァ!!!!!26000円!!!!!」
やたらと千円札が多くなったパチンコ帰り特有のサイフを片手に満足そうな俺。

「…足んないじゃないのよぉぉ!!!!!このバカーーーーー!!!!!」
【バゴン!!!】
と通算何発目かわからない鉄拳。

結果は足りなかった。
万発オーバーはしたもののそこで終わってしまったのだ。

「で、どうすんのよ吉田?明日もパチンコなわけ?」
不安そうな顔でショートケーキを頬張るリサ。
不安を前面に押し出そうとしながらも口の中の甘いものに負けて綻びかける表情
が実にかわいい。
「いいや。パチンコはもう終わりだ。」
俺はケーキの入っていたビニールからあるものを取り出した。

新聞を見せて俺はこう言った。
「明日朝早いからな!」


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今度はショートケーキを食べていた。
腹痛が治らない。
少し戻ったながらもボンヤリした頭で予想をしている。
危ない橋を渡ったがコレもリサのためだ。
本当になんとか繋がったな…

アレ…リサがいないこっちは夢か。
まぁどっちでもいいや。
とにかく明日の予想だ。

必死で尻を締めながら新聞片手にトイレへと急いだ。