フラフラしながら自宅に着いた。
頭から離れない。
あのハズレはいくらなんでもありえない。

店の名前を思い出して拳を握る。
遠隔店間違いなし。
裏で俺を笑って楽しんでやがる。

朦朧とする意識の中緊張して鍵を開ける。

ガチャリ

オヤジの靴がない。幸いにも宿直みたいだ。
お袋はいるようだが挨拶も当然しない。

部屋に入り鍵をかけた。

ふぅ。。。
一息ついたら涙が出た。


俺はパンティを持って2日ぶりの風呂へ向かった。

======================

「ちょっと!吉田!ちょっとってば!!!」
声が聞こえた。
リサ…。

靴を持って小さく部屋に同行してきた少女がいた。
「へぇ。ここがアンタの部屋なのね。」
しみじみと俺の部屋を見回す。
「まさか初めての男の子の部屋がこんな殻潰しとはね…はぁ」
率直な感想ありがとよ。
ムカつくなベイビー。

「おいリサ。とりあえず静かにな。ここはマンションで壁が薄い。決してデカイ声だすなよ。」

リサは口を押さえて了解のポーズ。
そしてヒソヒソ声で
「アンタこそ美少女が部屋にいるからって変な気起こさないでよね。ホントありえないからね。」

「安心しろよ。楽にしていい。お前も疲れてるだろ。ちなみに俺はロリコンだ。」
リサが真っ青になった(笑)

「とりあえず風呂入ってくるからくつろいでてくれ。」
ひっそりと部屋を出て脱衣所へ入る。

そこでまさかの展開。
「あのー…リサさん…なぜあなたもついてくるのかな…?」
「私だってお風呂入ってないのよ!!!別に行ったらバレちゃうじゃない!!!」
小声でこんなやりとり。
「いやっ!お前っ!ちょっ…!!!」
取り乱す俺に指を突き出し「シーっ」とジェスチャーをするリサ。
「先に私が入るから。アンタ絶対こっち向かないこと。
見たら…殺すから。」

「お前マジか…」
緊張と焦り。もう恐怖しかない。こんなの親に見られれば人生が即アウト。
奴らの事だ。喜んで本格勘当だろう。

「ちょっと壁側向いて。それと目閉じて。
それで目覆って。」
かけてあるタオルを放り投げられた。
「わかったよ…」

スル…。ゴソゴソ。
生々しい音が聞こえる…。
なんだこれなんだこれなんだこれ…。

目が回る…。
その時だった。

『ガタン』
音がした。

母親が出てきたのだ。
「マサ?」
すごく嫌そうな母親の声。
「あ!ああ!」
声が裏返った。



何しに来た!出て行け!

とこじ開けられる不安。脱衣所はカギがない!!!


…ドキドキ…

ドキドキ!

バクバクバク!!!
汗が垂れる。

「はぁ〜」

ため息を残して足音が遠のいた。

ヘタリと腰から落ちる俺。
スルリとタオルが落ちた。

あ。

目の前にいたのは最後の着衣を下ろそうとする白い少女だった。

白く透明な。今にも溶け出しそうな雪のやうな肌。
手で胸を隠すのはいいが薄い下の毛が見えてるぞ?

「キレイだ…」
口に出た瞬間に俺は意識を失った。

ーーーーーーーーーーー

目を覚ますと俺が持って来た俺用のジャージに身を包んだリサがいた。
左頬がズキズキ痛い。

「アンタも入れば。待ってるから。」

「ハイ…」
すごーく気まずい。
俺は風呂に入る。

どのぐらい倒れていたかわからないがあまり長いと怪しまれる。
俺は急いでシャワーだけ浴びた。

流石に気を使い出るときは手を出してリサにタオルを要求。
体を拭いて出ると髪を濡らしたリサが震えていた。

「バッカ!お前ドライヤーしないと!」
「だってお風呂入ってるのにドライヤーしてたらおかしいじゃない!」
震えるリサが言う。
俺はタオル一枚を巻いた状態だ。

弛んだ腹がと毛の生えたT首が恥ずかしい。
美容に気遣えばよかった…。
しかしそんな場合じゃない。

俺は即座にドライヤーを入れてリサの髪を乾かさせた。
隅で待つ俺はタオル一枚に濡れた髪。

「へクション!!!」とクシャミをすると頭に柔らかい手のひらが乗った。
「ハイ。終わったから…。ありがとう。」

目を逸らしたリサがドライヤーを渡した。
俺も髪を乾かすとゆっくりドアの外を確認。
テレビの音と気配を感じながら早足で部屋へ戻った。

俺はタオルを取りジャージを着た。
居間へ行き暖かい紅茶を入れて部屋に持ち帰った。
マグマカップを少女に手渡し布団を出してかけてやった。

「ありがと…」
この照れ臭そうな表情だけは何度見てもいい。
俺はエアコンを入れて改まる。

「さてリサ。作戦会議だ。」
「うん。」
双方真面目な顔。
「まずこれだけは確認したい。」
「うん。」
リサは同じ返答だ。

「お前…下着替えた?」
「ーーーーーッッ!!!!!」

顔を真っ赤に染めるリサ。
「…てない」
ボソボソと言う。
「なに?」
「履いてないわよっ!!!!!だってなんか嫌じゃない!!!!!」

シーーーーッ!!!!!とリサの口を押さえる俺。
顔を真っ赤に染めて睨んでくる。涙目である(笑)。
リサは手に握った濡れた白い布を握りながら言う。
「干させて…。さっきお風呂で洗ったから…。」
目がキョロキョロと一昨日と明後日の方を行ったり来たりしている。
俺も顔を真っ赤にしてハンガーを手渡した。
白である。

さて改めての改めて。
本題だ。
「作戦!ターイム!」
俺は切り出す。
「なによいきなり!?」
「作戦だよ作戦!聞きたいことは山ほどあるがまずは状況の整理だ。」

いい加減現状を見直そう。
「さてリサ。まず前提はこうだな?
俺はお前を高知へ連れていく。誰の力も借りずに。」
少しだけ申し訳なさそうにリサがコクコクと頷く。

「必要な金額を計算しよう。行くのは俺とお前。二人だな?」
「そうね。」
「そして一週間前後現地に滞在しなくてはならないと?」
「そうなるわね。」

スマホでルートを調べる。
最安値は夜行バスだ。
まぁ移動は辛いがしたかあるまい。
「二人で25000円か。現地で宿と食事を考えると…10万はいるなぁ。。。」
俺は深くため息をついた。

「でもアンタ無い…ん…でしょ?」
リサがまた泣きそうに言う。

「いや。奥の手だ。」
俺はカバンから新聞を取り出してリサに向ける。
金杯の馬柱が載っていた。

「アンタ。バカなの?」
呆れた声がする。
「さっきと同じパターンじゃない!!!」
怒声。
ならこっちも対抗してやろう同じ回答だ。
「それしかねーんだろ?任せてみろ」
リサは深くため息をついた。

さて。問題は資金である。
明日までに明日までに…。
すでに限度額。借りれるものは何もない。

…俺は立ち上がり。
親父の部屋へと向かった。

周知の場所。とあるもの。
どんな奴でも最後に頼れるのは親ということ。
コレ消滅するコースだけどね。
顔を引きつらせながら一万円を持ってリサのいる自室へ。

と…その時だった。
『ガタガタガタガタ!!!!!」
部屋が揺れた。
「キャッ!」
体をビクつかせて頭を抱えるリサ。
地震だ。

震度は3くらいか。
「大丈夫だよ。」
「私…地震こわいのよ……」
リサが上目遣いで言う。

あまりのいじらしさについ顔を赤らめて言う。
「ま、まぁ今日は遅い。リサも疲れてんだろ…?布団使っていいから。寝ろよ」

俺はそう言うと何もない板の間に寝転んだ。
ハァ。布団で寝たい。正直わけわからない。ストレスもある。昨日も眠れていない。
思わずため息が出た。


と。俺の背が引っ張られた。
「あ…アンタも布団入れば…?寒いでしょ?風邪引かれたらおじゃんなんだから…」
耳どころか首まで赤くしたリサが言った。
「それに…地震あったあと怖いから…その…背中…貸しなさいよ…」

俺は頭が真っ白になった。
替えたばかりのパンツがなんだかベタつく。
「い…いや俺は…少し予想するから!!!先に休んでてくれ!」
「そ…そう。でも本当に疲れたら布団入って。」
「あ…ああ。」
「あ。でも絶対背中向きね。少しでも触れたら燃やすから。」

「ツンデレならぬデレツンかよ!!!」
俺はホッとしたように、そしてガッカリしたように新聞を広げた。

「明日はマジで負けらんねーな」
呟いて夜は更けていく。


======================

気がつくと風呂も入らず手も洗っていない俺は部屋で新聞を広げている。
床には一万円札。
よく覚えていないが絶対まずいやつ。
前回の時は血みどろになったやつ。

金杯のページを開いて思う。

リサのためにも外せない。外せない外せない外せない…。

そういえばリサはどこに行った?
さっきまで布団にくるまっていたが。

アレ…。リサは…。
俺は現実と夢がわからない。
どっちがどっちかわからない。

あ。そうだ。
リサのために金杯当てないと。
リサはどこに行った?


夢を見て起きた。
ものっすごい夢だった。
31歳にして夢精をした。一昨日オナしたのにですよ?
やっぱリサの影響か…。彼女がいないこの状況は夢か現実か、どっちだっただろうか。

とにかく今はリサのために金を稼がないと。

中山金杯はセダブリランテスだ。
前足のかきが強烈でいかにも中山向き。休み明けの前走も相手を見れば上々だ。

京都はダノンメジャー。
展開も向きそうだし開幕週の馬場も合う。
金杯にしては固めだが今年は相手がいないのだ。

三連単で勝負しよう。
リサのために。

俺はフラフラと歩き出す。