来年は辰年
母が生きていたら年女72歳。
今年、卯年の父は年男だった
母は長年鬱を患っていた。
ただ上下はあったものの、
父が退職し、単身赴任から戻ってからは、
2人仲良く、元気に過ごしていた。
2020年1月に国内に新型コロナウイルスが
発生してから、母の心に変化が現れはじめた。
運動不足解消の為に通っていたヨガ教室が、
コロナウイルスの為、無くなったりして
外界との接触が削られていった。
5月は、私の働く病院の外科に、
癌の経過観察に来たと言って来ていた。
院内で偶然会った。
メイクをしベレー帽を被り、
お洒落していつも通り元気だった。
6月に入り、
『お父さんが怖い』と言いだし、私の所に来たいと言って滞在していた。
私は朝8時前から夕方5時過ぎまでいないこと。子供達が常に騒がしいこと。ゆっくり出来ないのではないかと言ったが、すぐに声を荒げる父にただならぬ恐怖心を感じていた。
でも、そんな父は昔からだし、今更変わるわけない。しかも、父自身には強く言ってるつもりはない。本人に自覚はない。
長年一緒にいた、いつもの父なのに、
どうしたんだろう?
と思っていた。
ウチでは、保育所嫌いの四女の面倒をみながら、日中の半分を横になって過ごしていた。
末っ子には、バーちゃんが具合が悪いからうちにいる事を説明し、寝ている時は静かにして寝かしてあげるんだよ。と話していた。
『私が寝てると、顔の真ん前でまん丸な目でじーっと静かに見てるんだよぉ笑』
と笑っていた。
私の弟医師から、日の光を浴びると良いと言われ、毎日、10分、15分、庭に出て草むしりをしてくれた。庭は今までになく綺麗になった。
『あんたの家は温かい』と喜んでいた。
夫の作る揚げ出し豆腐に感動し喜んでいた。
私の作る牛丼のレシピを教えてとメモしていた。
が、
独りでいるのも退屈だから…
と、父が三重県にいる弟を訪ねると言い出した。
私は気晴らしもいいんじゃない?と言ったが、
母は、猛反対。
もし、こっちから、弟家族の所へコロナウイルスを持っていったらどーするの!
三重からこっちにウイルスを持って帰ってきたらどーするの!
と…
私と夫が止めるのも聞かず、
独りにしてたらお父さんが
三重に行っちゃうからと、
7月には父のいる実家に帰って行った。
とは言っても、ウチから実家までは、
車で10分の距離。
いつでもおいでと言っていた。
8月は、夏休みもあり忙しかった。
電話で話したりはしていた。
ほとんど父の愚痴を言っていた。
ただ変わらず元気そうだった。
いつもの笑い上戸の母だった。
月末の私の誕生日にも花火のメールを
送ってくれた。
この頃は、誰も想像してなかった。
母が1ヶ月後にはもういない。
微塵も思っていなかった。