芥川賞『人生100年』投影

新人登竜門  2人で117歳

新人の登竜門・芥川賞で、

若竹千佐子さん(63)と

石井遊佳さん(54)という

2人合わせて117歳の受賞者が誕生

【読売新聞1.18】

若竹さんが

小説を書き始めたのは55歳。

東北弁を生かした受賞作

『おらおらでひとりいぐも』

(文芸冬号)は老いをテーマにした

デビュー作である。

人生100年時代に

ふさわしい新人の登場だ。



◆芥川賞の高齢受賞者◆

①黒田夏子(第148回) 75歳

受賞作・『abさんご』

経歴・26歳、読売新聞の短編小説賞に

『毬』が入選

②若竹千佐子(第158回)63歳

・『おらおらでひとりいぐも』

・55歳、小説講座の受講を始める

③森敦(第70回)61歳

・『月山』

・22歳、横光利一の推薦で、

東京日日新聞に『酩酊船』を連載

④三浦清宏(第98回)57歳

・『長男の出家』

・44歳、『赤い帆』が第72回芥川賞候補

⑤米谷ふみ子(第94回)55歳

・『過越しの祭』

・54歳、『遠来の客』で文学界新人賞

⑥石井遊佳(第158回)54歳

・『百年泥』

・33歳、『妊娠線上のマリア』で

文学界新人賞の最終候補


◆あくまで作品本位◆

『年齢は問題にならなかった』

16日の選考委員の記者会見で

堀江敏幸氏は、こう語りました。

2013年に黒田夏子さんが

史上最年長の75歳で受賞した際にも

堀江氏は登壇し

『野球は、

20歳と75歳の選手が同じ場に立つのは

難しい。だが、文学では

年齢を度外視して論じ、

感じられる』と語っている。

事実、1935年に創設された芥川賞は

『無名若しくは

新進作家の創作中最も優秀なるもの』に

授けられ、

年齢制限はない。

最年少は19歳の綿矢りささんで、

20歳の金原ひとみさんと

同時受賞した2004年は2人で39歳。

今回の117歳はちょうどその3倍だ。


◆若竹さん55歳で小説講座へ◆

昨年の文芸賞を受けたデビュー作品で

いきなり芥川賞に決まった

若竹さんは

小学校時代から

作家になる夢を抱いていたものの

結婚後主婦になり

本格的に書き始めたのは

55歳の時。

夫に先だたれた直後に

小説講座に通い始めてからだった。

講師は文芸誌『海燕』

(1996年廃刊)の元編集長で

吉本ばななさんの世界的ベストセラー

『キッチン』などを担当した

根本昌夫さん(64)だった。

編集者時代は、

現芥川賞選考委員の島田雅彦さんの

作品を含めて10作、

芥川賞候補になったが、

受賞に関わったのは初めてで

うれしさは格別だ。

『小説の神様はいると思いましたね』と

語る。


◆機が熟した◆

かつて

山田詠美さんや

綿矢さんらをデビューさせ、昨年、

若竹さんを選んだ文芸賞では

高齢の応募者が増えている。

森敦が受賞した1974年の芥川賞選評で

中村光夫は

『文学が老年の事業になるのは

近頃の趨勢だし、

六十代はむしろ成熟と収穫の時』と

語っている。いまやさらなる

超高齢化時代。

今回のダブル受賞は、

中高年世代への応援歌になった。