慰安婦問題『再燃は不可避』

韓国報告書    秘密交渉を公表

【ソウル=中島健太郎】

慰安婦問題を巡る2015年末の日韓合意を

検証するため、韓国外交省が設置した

作業部会は27日、報告書を公表した。

日韓両政府高官による8回にわたる

『秘密交渉』が協議の中心となり

元慰安婦の意見が十分に

反映されなかったとし、全般的に

合意を否定的に評価した。

その上で『被害者(元慰安婦)が

受け入れない限り、政府間で

慰安婦問題の『最終的かつ不可逆的な

解決』を宣言しても、

問題は再燃するしかない』と断定した。

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検証報告書のポイント

◇合意は『被害者の理解と同意を得ること

に失敗』

◇被害者が受け入れない限り、

『問題は再燃するしかない』

◇合意には『発表内容以外に

非公開部分』があった

◇合意に至る協議は

『終始一貫、秘密交渉』だった

◇日本政府の『責任』などが合意に

盛り込まれたのは『進展』

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日韓合意『被害者の理解得ず』

合意への態度を決めていない

文在寅政権が今後、

日本政府に『再交渉』などを求めれば

日韓関係は決定的に悪化する可能性が

高い。報告書は、日韓合意について

『戦時の女性の人権についての

国際社会の規範である

『被害者中心のアプローチ』は、

交渉の過程で十分に反映されなかった

』と指摘。元慰安婦への金銭支給に

ついて元慰安婦を支援する

市民団体と相談しなかった点などを

挙げ、『結果として被害者の理解と

同意を得ることに失敗した』と判断した

日韓の協議は、

朴槿恵前政権の14年4月から外務省局長

レベルで始まった。報告書は、

これ以外に15年2月から日本側が

安倍政権の谷内正太郎・国家安全保障局長

韓国側が朴槿恵前大統領側近の

李・国家情報院長(後に大統領府秘書室長)

による『高官協議』が計8回行われたと

明らかにした。日韓両政府は

これまで高官協議の存在を公式に

認めておらず、報告書で韓国側が

一方的に公表した。

報告書は、この高官協議を

『終始一貫、【秘密交渉】で

行われた』と強く批判し、国民の声を

反映させる『民主的な手続き』が

不足していたと指摘した。

また、報告書は、

合意当日の日韓外相会談での

やりとりに、これまで明らかにされて

いない合意の『非公開部分』があると

主張。会談で日本側が、

①ソウルの日本大使館前に設置された

少女像の具体的な移設計画を示すよう

要求

②韓国以外の『第三国』での慰安婦関連の

像や記念碑の設置は不適切と主張

③韓国政府が

慰安婦を『性奴隷』と呼ばないことを

希望

したことなどを合意の一部と定義した

この合意の『非公開部分』が

韓国外交の負担になっているとした

報告書は、

合意で日本側が『道義的』という

修飾語を付けずに

『日本政府は責任を痛感している』と

したことや、元慰安婦を支援する財団へ

の拠出金を日本政府の予算でまかなった

ことを『日本側が法的責任を

事実上認めたと解釈できる側面もある』

と肯定的に評価した。

文政権は報告書の発表を受け、

合意への対応を正式に決める。

康京和外相は27日の記者会見で、

元慰安婦や市民団体の意見を聞く考えを

強調した上で、『韓日関係への影響も

考慮しながら、慰安婦合意に対する

政府の立場を慎重に決めたい』と述べた

作業部会は

今年7月末に設置され、

左派系・ハンギョレ新聞の呉・

元論説委員室長を委員長とする

計9人の委員が検証作業を行った。



◆慰安婦問題を巡る日韓合意◆

朴槿恵前政権時代の2015年12月28日

岸田外相とユン・ビョンセ外相

(いずれも当時)がソウルでの会談後、

共同記者会見で発表した。

双方は問題の

『最終的かつ不可逆的な解決』を

確認し、日本側は安倍首相のおわびと

反省の気持ちを示し、元慰安婦支援の

ための費用を政府予算で拠出することを

表明。韓国側は、ソウルの日本大使館前

の少女像についての日本の懸念を認め

関連団体との協議などを通じ

『適切に解決されるよう努力』

することを約束した。

日本政府は、韓国側が設立した

元慰安婦支援の財団に10億円を拠出し

合意時点で生存していた元慰安婦の

7割が1億ウォン(約1050万円)を

受け取った。



◆河野外相

『受け入れられない』

河野外相は27日、

日韓合意の検証結果を韓国外交省の

作業部会が発表したことについて

『韓国政府が

既に実施に移されている合意を

変更しようとするのであれば

日韓関係がマネージ(管理)不能となり

断じて受け入れられない』とする

談話を発表した。

合意について談話は、

『正当な交渉過程を

経てなされたものであり、

合意に至る過程に問題があったとは

考えられない』と強調した上で

『両政府間の合意であるとともに

国際社会からも高く評価されたものだ』

として、着実な実施を強く要求した。

河野氏は同日、訪問先の

オマーンで記者団に

『非公表を前提としているものが

一方的に公表されたというのは

いかがなものか』と不快感を示した。

日本政府は26日、

韓国政府から外交ルートで事前説明を

受けた際、遺憾の意を伝えた。

外務省幹部は

『信義則違反で、

外交交渉が成り立たなくなる』と

憤りをあらわにした。


◆神戸大教授     木村幹氏

(朝鮮半島研究)

日本  新たな対応は不要

最大の注目点は、作業部会が

慰安婦合意を破棄するに足る

交渉過程での日本側の瑕疵を

見つけられるかどうかにあった。

結論から言えば、

見つけることが出来なかった。

韓国側が、

日本の責任にする形で合意を破棄する

ことが難しくなった。

他方、作業部会は、

合意に【非公開部分】があることを

突き付けた。

外交交渉では珍しくないが、

『暴露』することによって

『不公正さ』を強調しようとした。

とはいえ、合意そのものの

合法性は揺らがない。

今回の検証結果発表は、

結果として、

国民にあらゆる外交交渉の

経緯を知らせる義務があることを

謳ったも同然だ。

そのことは北朝鮮や米中とも

複雑な外交交渉を控える

韓国にとって、

大きな負担となるかもしれない。

検証結果が

日本側の

責任追及につながるものでなかった

ことは明らかで、

この時点で

日本が

新たな対応を行う必要があるとは

思えない。

文在寅政権は

朴槿恵前政権の

外交政策を非難した結果、

逆に自らの対応が難しくなった

仮に合意の破棄や

見直しを求めた場合でも、その根拠は

『韓国側の問題』にならざるを得ず、

これをどう解決するかは

文政権の問題だからだ。



【読売新聞12.28】