動かぬ個人資産1800兆円

草食投資家、増殖中

【日経8.18 迫真HAKUSHIN】

[フェイスブックで見つけて旦那さんに

相談せずに始めちゃいました]。

6月22日、横浜市在住の

黒田絵理奈(30)は生まれたばかりの

赤ちゃんを抱えながら投資家デビューを

打ち明けた。彼女が始めたのは

5円からできる[おつり投資]だ。

[子どもに習い事をさせてあげたくて。

お買い物するだけで投資できる]

と満足げだ。

フィンテックベンチャーの

トラノテック(東京・港)が6月7日に

始めた[トラノコ]は

家計簿アプリなどと連携して買い物の

おつりを計算し、その分を自動で

投資する。[消費]を[投資]につなげたのが

ミソだ。社長のジャスティン・バロック

(43)は[投資のハードルを極限まで

下げた]と語る。外資系金融機関から

独立して起業したバロックの目には

日本に眠る膨大な金融資産は宝の山に

映る。投資を身近にしようと企業は

工夫を凝らす。

クレディセゾンは自社のクレジットカード

でためたポイントを運用原資にする

サービスを開始。

都内の女性(31)は

[ポイントなら思い切って判断できる。

投資が楽しいと感じた]と話す。

楽天証券も同様のサービスを近く始める

バブル経済期など、

かつての株式市場には

一攫千金を狙いリスクを追う

[肉食投資家]が多く存在した。

今、運用の世界では[草食化]が進む。

[早くリタイアしたい]との動機から

15年前に毎月2万円から投資を

はじめた会社員の沖雅之(42)は

アベノミクス相場の追い風も受けて

コツコツと積み立てた資産が

5000万円に膨らんだ。

[変に売買するより、よほど楽だ]と

草食投資に太鼓判を押す。

セゾン投信社長の中野晴啓(53)の

異名は[積み立て王子]。

コツコツ投資の意義を年150回超開く

セミナーで訴え続けてきた。

同社は長期投資をやめさせないように

手続きを面倒な書類申請にしている。

顧客から苦情をきたほどだが、

中野は

[短期の売買を好んだり元本を

分配する投信を買ったり。

顧客のニーズは往々にして間違っている]

と顧客本位を強調する。

成功体験を積んだ人が増えれば

貯蓄から資産形成に進む人が増えると

中野は信じている。

米国では40年近くかけて

成功体験を蓄積した。

日本はまだ動き始めたばかりだ。

(敬称略)


[川上穣、

堀大介、

嶋田有、

野村優子、

宮川克也が担当しました。]