元世界王者の内山選手  引退へ

Sフェザー級   11連続防衛

謙虚に  自ら律し頂点

【日経=スポーツ山口大介】

試合前と後で別人かと見まがう

ボクサーは少なくない。

殴られて顔が変わる、という意味ではない

減量のリバウンドで試合がない時期の

選手は案外、顔も体も丸々としている。

内山選手は違った。

いつ会っても、変わらね精悍な顔つきに

引き締まった肉体は厳しい自己管理を

感じさせた。コンディション作りへの

関心が高じて野菜ソムリエの資格も

取ったほど。徹底した自律心が

日本歴代最長となる

6年3ヶ月の長期政権を実現させた。

全盛期のKO劇から

忘れてしまいそうになるが、

ボクシングを始めたのは

高校からと遅い。拓大1年の時、

レギュラーになれず同級生の荷物番に

甘んじた屈辱がその後の原動力になった

引退会見で語った

[努力できない人間はリングに

立ってはいけない]との言葉こそ

内山選手の本分だったのだろう。

コンビを組んだトレーナーは

年下で、主従関係は内山選手が

上。尻をたたかれなくとも、

自ら律することのできる

大人のボクサーだった。

大所帯で自由な空気が濃い

ワタナベジムで、練習で手を抜かない

内山選手の姿勢が緊張感をもたらし

後輩たちの手本となった。

ある選手は

[内山さんが来ると

ジムの空気が変わる。

それだけの厳しさで取り組んでいた]

と語る。

リング内外で尊敬を集める振る舞いが

でき、[内山先輩]と呼びたくなるような

人物だった。

V11はその努力にふさわしい偉業だ。

[思い残すことはない]と

最後まで潔かった本人に成り代わって

言えば、あわよくば米国で

一度勝負させてあげたかった。