[語る/日経]

歌舞伎俳優=松本幸四郎さん

周囲を幻惑する芸めざす

来年1月の親子孫3代同時襲名まで

半年余り。実父が最晩年に

事実上の隠居名として名乗った

白鸚を襲名するが、

[ロスタイムとは思ってない。

これから得点が入ることもあるし

あわよくば逆転する試合だってある]

と意気盛んだ。

残り少ない幸四郎としての舞台。

今月は東京・歌舞伎座で26日まで、

時代物の名作[鎌倉三代記]の

佐々木高綱と、

長谷川伸・作の新歌舞伎

[一本刀土俵入]で駒形茂兵衛に出演中

[鎌倉幕府の武将と、力士くずれの

アウトロー。一見180度違う2つの

役だが、どちらも起死回生の

ワンチャンスに賭ける男を描く。

その緊迫感をお客様と一心同体と

なってつくっていく]

かつて[鎌倉三代記]で共演した

女形の四代目中村雀右衛門、

茂兵衛を演じた十七代目中村勘三郎や

二代目尾上松緑らの名を挙げ、

[観客だけでなく共演者にも

夢を見させてくれた先輩たちを

思い出す。キラキラした星屑の

ようなものをまいて、周囲を幻惑させて

しまう。白鸚になったら、そんな

芸を目指そう]。

いまの若手や中堅は

[新しいものを取り入れて外側から

歌舞伎を変えようと努力している]

と評価する。一方で

[僕は内側から歌舞伎を変えたい。

繰り返しやっている役をじっくり

見据えて新たな発見を加え、

古風だけど古くさくない歌舞伎を

生み出したい]。

9、10月は翻訳劇[アマデウス]に

出演し、11月の歌舞伎座が幸四郎での

最後の舞台となりそうだ。

ミュージカル[ラ・マンチャの男]を

はじめ歌舞伎以外の舞台にも

積極的に参加してきた。

ミュージカルや現代劇も含め

[声援が有る限り、演じていく]と

力を込めた。74歳。