ベルギー消えぬ脅威

連続テロから1年

【日経ブリュッセル=森本学】

若年層の過激化  監視から予防へ

首都ブリュッセルの地下鉄駅や

国際空港を自爆テロ犯が襲撃し、

32人が犠牲となったベルギー連続テロの

発生から22日で1年がたった。

ベルギー政府は移民街の監視強化など

今も強硬な治安対策を展開している。

街角では武装した兵士が警戒にあたる。

政府は今後、若年層の過激化防止など

長期的な抑止策へと軸足を移す方針。

消えないテロの脅威との闘いは

長くなりそうだ。

[時折よみがえってくるテロの恐怖や

記憶に負けずに、前に進まなければ

ならない]。

自爆テロに襲われた欧州連合(EU)

本部近くの地下鉄マールベーク駅。

ベルギーのフィリップ国王夫妻や

ミシェル首相らも出席した

追悼式典では、自爆テロの生存者で

教師のクリステル・ジョバネッティさん

(31)が[重要なのはもう一度立ち上がる

ことだ]と呼び掛けた。

ベルギーの連続テロは

過激派組織[イスラム国](IS)が

犯行声明を出した。

実行犯は過激思想に染まった

欧州育ちの若者らだった。

実行犯とされる5人のうち3人は

自爆死。事件後に逃走した2人も

逮捕された。捜査では2015年11月の

パリ同時テロとのつながりも浮き彫りに

しかしテロ後1年たった今なお計画の

首謀者など全容は不明のままだ。

ベルギー当局が過去1年、

注力してきたのがイスラム教徒の

多い移民街の取り締まり強化だった。

とりわけ標的となったのが、

パリ同時テロの首謀者らが

生まれ育った街として有名になった

ブリュッセル西部の

モレンベーク地区だった。

地元紙によると、ベルギー当局は

同地区の約8600軒の住居、

地区人口の約4分の1にあたる

約2万3千人を捜査し、

テロとの関連が疑われる

50以上の組織を摘発した。

テロ警戒のために監視が必要な

[危険人物リスト]も作成し、

約30人を厳格な監視対象の下におく。

[テロ事件前に比べてベルギーは

安全になった]。

テロ対策を担うベルギーの

ヤンボン内相は胸を張る。

しかし移民系住民ばかりを狙い撃ちに

したかのような強硬策に、

地元住民の間には不満が募る。

[市当局や警察が敵視されては

いけない。信頼感情が必要だ]。

ベルギーで移民系の若者の過激化を

防ぐ成功例として注目を浴び、

2月に世界市長賞を受賞した

メヘレン市のゾーメルス市長は

強硬策だけでは若者の過激化は

防げないと指摘する。

メヘレンではスポーツクラブや

学校、モスク(イスラム礼拝堂)が

連携し、若者の過激化の芽を早めに

摘むネットワークを築いてきた。

[過激化の危険にさらされている

若者の心を取り戻す]。

ヤンボン内相も21日、

地元ラジオ番組で治安維持の

強硬策に軸足をおいた対応から、

若者の過激化阻止への取り組みなど

予防策へシフトする姿勢をみせた。

メヘレンと同様のスポーツクラブ

などと連携した[心を取り戻す

プログラム]を検討をする考えを表明。

ただ効果を得るには

[時間がかかる仕事だ]と理解を求めた。

[我々はまだここにいる]。

3月上旬、動画投稿サイトに掲載された

IS関連とされる映像には、

テロの脅威を意識させる紙片を

手にした男が、イスラム音楽を背景に

ベルギー第2の都市アントワープの

駅周辺を歩く様子が映されていた。

当局は急遽同駅の

警備強化に追われた。

ベルギー国内のテロ警戒度は

最高レベルに次ぐ

[レベル3]のまま。

[(テロの)脅威があり得る]との

警戒態勢が続く。