【温故知親】

両陛下ベトナム訪問〔下〕

昨年11月。ベトナム人留学生4人が

静岡県袋井市の[常林寺]を訪れ、

境内の古びた石碑の前でカメラに

納まった。

その一人で静岡大工学部の男子学生、

チャン・バオ・カンさん(23)は、

ベトナムに進出した日系企業への

就職を目指して来日した。

[日本の技術を学び、母国で生かしたい]

と目を輝かせる。

石碑は20世紀初頭、

ベトナムの若者たちを日本に

留学させた

[東遊運動]の指導者、

ファン・ボイ・チャウ

(1867~1940年)が1918年に建立した。

カンさんは、同運動にちなんで

名付けられたホーチミンの

[東遊日本語学校]出身だ。

石碑には、かつて東遊運動に

資金援助し、寺で眠る

袋井市出身の日本人医師、

浅羽佐喜太郎

(1867~1910年)への謝辞が

漢文で刻まれている。

[我らの志を

哀れんで無償で

援助してくださった。

古今にたぐいなき義侠の方である]

カンさんは

[碑を見て感動した。

国のために目標を持って

考えることが大事だと思った]と話す。

日本へのベトナム人留学生は

急増している。日本学生支援機構に

よると、2015年度の調査では

約3万9千人と10年前の22倍。

この10年の間に韓国や台湾を上回り

中国に次ぐ2番目の多さとなった。

ベトナムの経済成長や

日系企業の進出などを背景に、

日本で学ぶ機運が高まっている。

(一部省略)

袋井市では東遊運動による

交流の歴史を広めようと、

住民らが05年に

[浅羽ベトナム会]を発足。

ベトナム人留学生を

ホームステイで受け入れている。

ファン・ボイ・チャウが晩年を

過ごした古都フエには

友好の記念碑を寄贈した。

袋井市も募金を集め、14年に

ベトナムの小学校建設に協力。

日本に赴任するベトナム大使も

袋井市を訪れる。

天皇、皇后両陛下は今回の

ベトナム訪問で、フエの

ファン・ボイ・チャウ記念館を

見学される。同会の安間幸甫代表(73)

[来年は石碑の建立から

100年の節目。両陛下の訪問を

契機に、これからの交流を担う

若い世代が歴史を共有し、

両国の友好をさらに発展させてほしい]

と願う。

[日経/今井孝芳、榎本行浩が担当]