マーティン・スコセッシ監督

問うべきは[人はなぜ生かされるのか]

[日本経済新聞2.4]

私がずっと考えてきたことの

延長線上にこの映画はある。

ニューヨークのイタリア移民の街が

私を作った。

そこでは神父が愛や善を説く一方で

多くの犯罪や暴力という

現実があった。

どうしてそれが混在するのか。

私は苦しんだ。

問うべきは、人はなぜ生かされて

いるのかということだ。

キチジローは

弱き者はどこで生きればよいのかと問う

[沈黙]は弱さを否定せず、

受け入れることを描く。

みなが強くあることが

文明を維持する唯一の手段ではない。

今の世界で一番危険にさらされて

いるのは若者だと思う。

彼らは勝者が世界を制していくことしか

見ていないから。

それしか知らないのは危ない。

原作の終章をどう解釈するかを

長年考えた。

第三者の視点で書かれたこの部分を

何度も読み、実はロドリゴは

完全に棄教していないというヒントを

得た。キリスト教の勝利ではない。

ロドリゴは度重なる[転び]の中で、

自分の信念を獲得していったのでは

ないか。

[沈黙]を作りながら、

信じることとは何なのかを

探求してきたが、

その過程こそが人生なのだと気づいた。

人生は終わりなき

探求だと思う。