【天皇陛下の会見全文】

困難しのぶ被災者に思い

《83歳の誕生日》

今年1年を振り返ると

まず挙げられるのが、1月末、

国交正常化60周年に当たり、

皇后と共にフィリピンを訪問したことです

アキノ大統領の心のこもった接遇を受け

また、訪れた各地でフィリピン国民から

温かく迎えられました。

私が昭和天皇の名代として

初めてフィリピンを訪問してから

54年近くの歳月が経っていました。

この前回の訪問の折には、まだ、

対日感情が厳しい状況にあると

聞いていましたが、空港に到着した

私どもを、タラップの下で

当時のマカパガル大統領夫妻が

笑顔で迎えてくださったことが

懐かしく思い出されました。

今回の滞在中に、近年訪日した

フィリピン人留学生や研修生と

会う機会を持ち、また、やがて

日本で看護師・介護福祉士に

なることを目指して、日本語研修に

取り組んでいるフィリピンの人たちの

様子に触れながら、この54年の間に、

両国関係が大きく進展してきたことを

うれしく感じました。

両国の今日の友好関係は、

先の大戦で命を落とした多くの

フィリピン人、日本人の犠牲の上に

長い年月を経て築かれてきました。

このたびの訪問において、

こうした戦没者の霊の鎮まる

それぞれの場を訪ね、

冥福を祈る機会を得たことは

有難いことでした。

また、戦後長く苦難の日々を

送ってきた日系2世の人たちに会う

機会を得たことも、私どもにとり

非常に感慨深いことでした。

今後とも両国の友好関係が更に深まることを

祈っています。

東日本大震災が発生してから

5年を越えました。

3月には、福島県、宮城県の

被災地、そして9月には岩手県の

被災地を訪問し、復興へ向けた

努力の歩みとともに、

未だ困難な状況が残されている

実情を見ました。その中で

岩手県大槌町では

19年前に滞在した宿に

泊まりましたが、当時、

はまぎくの花を見ながら歩いた

すぐ前の海岸が、地震で海面下に

沈んで消えてしまっていることを

知り、自然の力の大きさ、怖さを

しみじみと思いました。

この5年間、皆が協力して

復興の努力を積み重ね、

多くの成果がもたらされてきました

しかし同時に、今なお多くの人が困難を

しのんでおり、この人々が、

1日も早く日常を取り戻せるよう

国民皆が寄り添い、協力していくことが

必要と感じます。

[日本経済新12.23 13版34]

(つづく)