受験シーズンと重ならなければ

韓国の大統領は

もう少し持ちこたえたかもしれない。

親友の国政介入疑惑が、

深まった今月は

全国が入試一色に染まる

[大学修学能力試験]の時期だった

そんな折も折、かの親友の娘の

名目校不正入学も明るみに出たのである

略して[修能]と呼ばれるこのテストは

日本のセンター試験に似ているが

競争の厳しさは比較にならない。

大学進学率7割の国で、

若者は人生をかけて修能に臨む。

なのに、闇の権力者は

学力不十分の娘を

一流大学に送り込んだのだ。

そこがブランド価値のひときわ高い

梨花女子大だったから、

世論はいよいよ沸騰した。

きのう大統領がとうとう

早期退陣を表明したのは、

もはやそうした怒りをかわす道なしと

悟ったからだろう。

デモには試験を終えた高校生らの

姿も目立ったという。

かくなるうえは粛々と身を

引いてほしいが、こんどの事件が

残した傷はなかなか癒えはしまい。

若者たちに無力感や不公平感を

植え付けた罪はとりわけ深い。

韓国ではかつて、大学を

[象牙の塔]ならぬ[牛骨塔]と

呼んだ。子どもの教育費のために

農民が牛を売り、その骨で塔が

できるという嘆きである。

そんな教育熱がいまも一向に

衰えぬ社会で、今回の騒動は

[牛を売る]親たちも憤らせたに

違いない。

朴氏が去っても、

この国に

うずたかい不信の塔が

残されるのだろうか。

[日本経済新聞1130/春秋]