外交に駆け引きはつきものだが、

それでどんな成果をあげたのかは

素人目にはわかりにくい。

〔日本経済新聞=春秋〕

国際会議などを総括して[日本が完勝]と

書き立てるメディアがたまにあるが、

交渉ごとが100対0で終わることはまずない。

せいぜい[上手に立ち回った]くらいだろう。

◆そもそも相手を一方的に追い詰めることが

よいかどうかも定かではない。

戦国武将の武田信玄は戦いに勝つとは

[五分をもって上とし、

七分を中とし、

十分をもって下とす]と語ったとされる。

[窮鼠猫を噛む]のことばもある。

相手を滅ぼすならばともかく、

長くつきあう相手にむやみにけんかを

売ってよいことはない。

◆日露戦争のあと、明治の元勲、

伊藤博文は日露協約の締結に動く。

勝った勝ったと浮かれていた世論は

[恐露病]とバカにした。

伊藤はなぜ昨日の敵と手を結んだのか。

日露講話を仲介した米国が

一転して日本の伸長を押さえ込みにかかる

のではないかと読んだからだ。

維新の荒波をくぐった世代の洞察力は

大したものだ。

◆残念ながら、

日露連携はロシア革命で水泡に帰し、

日本は大陸進出の結果、

米国・英国などと抜き差しならない

対立に陥った。

安倍晋三首相が進めるロシアとの

新外交の行方はどうだろう。

中国を牽制するには

ロシアの引き込みが欠かせないが、

下手に動くと肝心の

日米同盟が揺らぎかねない。

何とも複雑な連立方程式である。