[生前退位]

皇室典範見直しや新法

[日本経済新聞7月15日]

-社説-

現在82歳の天皇陛下が

生前に皇太子さまに

皇位を譲り、退位する

意向を持たれているという。

周辺を通じて明らかに

なった。

改めて日本の皇室の

あり方を考える機会である。

国民的な議論を

深めていきたい。

陛下は55歳で即位された後

憲法に定められた

外国の大使や公使の

接受といった国事行為に

加え、

[国民に寄り添い、

ともに歩む]という

お考えから、数多くの災害の

現場を訪れ、被災者を

見舞われてきた。

膝を折って避難所でお言葉を

かける姿に、

多くの国民が心を

打たれている。

さらに、第二次世界大戦の

犠牲者を追悼し、

平和を祈念するため、

昨年はパラオ、

今年になってフィリピンと

海外の激戦地にも慰霊の

旅を重ねられた。

強い責任感、義務感で

激務をこなされてきたが

高齢の陛下の負担を

懸念する声はかねて

宮内庁関係者や国民の

間にもあった。

陛下自身も加齢による

体の変化について、

昨年末の記者会見で

[年齢というものを感じる

ことも多くなり、

行事の時に間違えることも

ありました。]と

語られている。

陛下は数年前には、

公務の負担軽減について

否定的な趣旨の発言を

されたこともあった。

今回、周辺に

伝えられた生前退位の

意向は、

象徴天皇としての役割を

遂行することの重要さと、

自らの体調の変化を考慮し

抜かれた末の判断とも

思える。

欧州では2013~14年に

かけ、オランダやスペイン

などで高齢や健康への

不安などを理由に

国王が生前退位した

例がある。

しかし、

日本は江戸時代の

光格天皇以来例はなく、

現在、皇室制度の

基本法となっている

皇室典範にも規定は

設けられていない。

場合によっては

摂生を置き、

天皇の国事行為を

代行することは可能だが

陛下のこれまでの

発言からは

[体が続く限り公務に当たり

できなくなった時には

次へ譲る]との

お考えがにじみ出ている

ようにも見える。

いずれにしろ、退位と

なれば元号も変わるなど

社会的、経済的な

影響は避けられない。

退位後の尊称や公務内容と

いった論点もあり、

国会の場での幅広い

意見の交換が欠かせない。

象徴天皇陛制は

戦後日本の平和と繁栄の

支柱であったと言っても

過言ではない。

末長く守り続けるべく、

静かな環境のもとで

慎重な議論を

求めたい。


[日本経済新聞13版

【総合1】2]←ご覧ください