【読売新聞/編集手帳】

ボクサーの大場政夫さんが

現役の世界王者のまま、

自ら起こした

自動車事故で

世を去ったのは

1973年だった。

1月25日は

命日にあたる

◆21歳で王座に就き、

23歳で没した。

庭付きの家を二つの拳で

現実にした。ぱっと咲き、

ぱっと散った印象が強い。

存命なら66歳、

団塊の世代である。

どなたの周りにも、

この世代の元気な姿が

あることだろう。

当時、70歳だった

日本人男性の平均寿命は

80歳に延びた

◆団塊といえば、

直木賞に決まった

作家の青山文平さん(67)

も同じ世代に属する

40代でデビューし、

一度は挫折したが、

還暦後の再出発が

実を結んだ。

こちらは遅咲きである。

人生が長くなった

反映というべきかも

知れない

◆受賞短編集

『つまをめとらば』

の表題作は

隠居した2人の武士の

交友を描く。

主人公は戯作を書き

友は算学に勤しむ。

〈齢を重ねるにつれて

分かったことが増えたが

分からないことも増えた〉

主人公の心境が

つづられる。

〈でも、それがわるいとは

思わないし、

いやでもない〉

◆夭折した王者を思う。

生きていれば、

とりどりに

花実が咲いて

いただろう。