人道介入 国際法の課題
国際司法裁判所裁判官 小和田 恒氏
アジアで初の開催となる万国国際法学会東京国際総会のため
オランダから帰国している小和田恒・国際司法裁判所裁判官が、
同学会会長としての立場から
讀賣新聞のインタビューに答えました。
シリア情勢が注目される中、人道的理由による軍事介入の是非を
めぐって、国際法学会が対応を急ぐ必要性を強調。
1873年、欧州の大戦争の悲劇を教訓に、
紛争の平和的解決を目指す法学者が作った世界で最も権威のある
国際法学会だ。かつては、曖昧な国際慣習をきちっと法典化して
世界に示す役割を担っていました。
今は国際法が直面する問題に対して権威ある見解を世界に示すのが
重要な役割だ。
今の国際法が直面し、東京総会で大きなテーマとなる問題には
どんなものがあるのか。
大きな問題の一つになると予想されるのは、シリアでも焦点となる
人道的介入の是非だ。19世紀でも戦争は紛争解決の正当な手段として
認められていました。それを粘り強い努力で違法化したのが国際法の歴史。
その結果、今では、正当な武力行使と認められるのは、
国連安全保障理事会の決議を経た行動と、
侵略を受けた国の自衛という二つのケースだけになりました。
ところが近年、旧ユーゴスラビア紛争などで
大量虐殺事件が起きた時、「国際社会はこの残虐行為を黙って
見ているべきなのか」との問題意識が生まれ、惨劇を食い止めるための
軍事介入が行われました。この武力行使は二つのケースに
当てはまらないだけに、その是非が国際法の最大の問題に浮上してきた。
結論は出ていないが、根幹の問題であり今後も議論が続けられるだろう。
日中韓の間では尖閣諸島や竹島の問題が深刻だ。
解決にあたって国際法の果たす役割と限界は。
個別ケースには言及できないが、国際法が示すものは決まっています。
紛争は平和的手段で解決しなくてはいけないということだ。
そのために国際司法裁判所(ICJ)がある。
日本はICJの裁判権を認める宣言(選択条項受諾宣言)を
しているが、中国、韓国はしていないのでICJに
持って行けない。
ー国際法では解決できないのか。
そうではない。政治学者はよく見落としてしまうが、
国家エゴだけで動くのではなく、人間と同じ国家としての名誉と
いうものがある。国際社会の規範を受け入れ、その一員として
生きて行くべきだという意識は、100年前に比べたら比較にならないほど
強くなった。
まどろこしいようでも、ICJの裁判権を認める国を
増やす運動を国連で進めるなど、
国際社会での法の支配を強める努力を続けることも
平和憲法を持つ国だからこそ、国際法重視という
姿勢が重要である。
【略歴】
新潟県生まれ。東京大学卒
1955年に外務省入省。
条約局長、事務次官などを経て、
94年から国連大使。東大、米国ハーバード大などで
教鞭をとり、早稲田大教授。
2003年から国際司法裁判所裁判官。
09-12年に同裁判所長。
11年から万国国際法学会会長。
「平和と学問のために」(丸善)など
著書多数。
皆さまご存じ「皇太子妃の父」である