朝日新聞(夕刊)に掲載されてました記事より


【まちの埋蔵文化人】


海堀 和夫さん(80)


バシーッと聞かせやしょう


「待ってました!」


「松嶋屋!」


京都・南座や大阪松竹座で幕が開くとき、


役者が見えを切ったとき、客席の後方から声を張り上げる。


歌舞伎の「大向う」。


芝居の邪魔にならないよう抑えを効かせつつもよく通る低声が


響き渡る。その関西唯一の "プロ"集団「初音会」の最長老だ。


芝居好きだった父親の影響で中学生の頃から歌舞伎を見てきた。


大向うに憧れ「自分も」と思ったが、いざとなると恥ずかしくて声が


出ない。30代になって思い切って声をかけた。あのドキドキ感と


直後の解放感は、今も忘れられない。


公演が1ヶ月あれば、半月は劇場に詰める。


観劇料は免除されるものの、ギャラも交通費も弁当代も出ない。


スーパーなどに勤めていた70歳までは、


仕事の合間を縫って劇場に駆け付けました。


「大向うのない歌舞伎はワサビのないすし」と言った役者がいる。


円熟の芸に至るまでには数々の失敗があった。勢いよく出演者の屋号を


呼んだものの、舞台上にその役者がいなかった。絶妙のタイミングと


思って声をかけたら、役者のせりふにかぶってしまいました。


「だからこそ、バシーッと決まった時は快感ですわ」


今も公演前は過去のビデオを繰り返し見て、


出演者の登場順も事前に把握するなど研究に余念がない。


高齢化した初音会のメンバーは10人を切りました。


劇場に自分しかいないこともある。


そんな時は声色や声かけの場所をこまめに変えて


一人何役もこなす。


「大向うは、芝居に参加する客席の出演者」


その誇りにかけて、公演を盛り上げる。



【後進の育成に努力】


京都・南座でありました


「五月花形歌舞伎」にも


"出演"されていました


ファンでつくる


「関西・歌舞伎を愛する会」の


「大向う勉強会」では、指導係として後進の育成に


力を注いでいます。



初めて海老蔵さんを観に行きましたが、


あのお芝居の最中に


お席に座っていらしたご老人。


芝居の進行と共に、役者の動きを詠みながら


"GOOD TIMING"で


芝居に集中している客席に


「大向う」が響いた時、初めて観にきた私には


驚きと共に「早替わり」する役者を


ぐっと惹き付ける「瞬間」を作ってくれているかの


様に感じたんですよね。


とても、「昨日、今日」積み上げてきただけの


簡単なものではない気もして、


芝居の感動と共に、後々も気になっていました。


後に、新聞でこの記事をみつけて


歌舞伎彩る「大向う」だと分かりました。


民放TVで「銀座を練り歩く歌舞伎集団」を


追いかけて「成田屋!」など、


それぞれの屋号を叫ぶ人を


ちらっと特集していたのを観ていた事も有って


へぇぇ~そうなんだ。なんて


色んな意味で自分にとって


「新鮮」な体験となり得たし、


改めて興味深かい私の「歌舞伎入門」となりました。