アジアごみ 20兆円市場
資源が少なく、国土が狭い日本。
そこで暮らす私たちが培ってきた
省エネや公害対策などの技術は世界でも高いレベルにある。
日本の技術は環境問題を解決し、国益をもたらすか。
現状を伝え、課題を考えます。
「静脈産業市場」を巡る争いが激しさを増してきました。
都市のごみ焼却や再資源化などは、体内の老廃物を回収する
静脈の機能になぞらえ静脈産業と呼ばれます。
市場規模はアジアだけで2020年に約20兆円。
この巨大市場を狙い、各国の焼却炉メーカーに政府も
加わり、しのぎを削る。
「日本の焼却炉を使えば灰が建設資材として再利用できる」
シンガポールで7月3日、同国環境庁のロニー・テイ長官と
向き合った白石順一・環境省地球環境審議官は切り出した。
政府高官の直接的な物言いに、長官も
「大変興味がある。技術が共有できれば」と応じました。
排ガス規制などの権限を持つ環境省は本来、
企業には煙たい存在だ。それが焼却炉輸出では
後押し役に転じ、この"商談"には焼却炉メーカー6社が
同行しました。各社が狙うのは、同国で今秋にも入札手続きが始まる
焼却炉の建て替え事業だ。
事業規模は数百億円程度だが、落札すれば東アジア各国に、
技術力をアピールできる
「ショーウインドー」を確保することにつながります。
都市国家シンガポールは国土が狭く、ごみ処分場の確保に
頭を悩ませています。昔から飲み水は隣国マレーシアに
頼っているが、焼却ごみの輸出は制限され行き場がない。
シンガポールは、海水の淡水化や灰の再利用、ごみ発電などの
新技術が欲しい。日本企業には、要望に応える技術力がある。
かつて欧州企業から技術供与を受けて焼却炉事業を
始めた日立造船は、2010年、逆にその企業を買収し、
世界最大の焼却炉メーカーとなりました。
同社は飲み水など上水に注目しており、「排熱で
海水を飲み水に変える技術も提案できる」と言う。
JFEエンジニアリングは、ごみを一気に溶かして建設資材に
変える技術があり、「灰の積極利用を考えるシンガポールにとって
魅力的な技術のはずだ」と胸を張る。
廃棄物処理の世界的な企業を、環境省は
「静脈産業メジャー」と命名しました。同省の次官は
「石油や穀物は国際的巨大企業のメジャーが市場を牛耳っている。
静脈産業では日本がメジャーになる力がある」と期待する。
ただ技術力だけで、競争は勝ち抜けない。
インフラ輸出の先輩である原子力発電所や
高速鉄道、上下水道も、日常的な運用や管理・修繕などを
パッケージにして初めて評価される。
水メジャーとして知られ、廃棄物処理も手がける仏ベオリア社は、
途上国で長期間、施設を管理運営するノウハウを豊富に持っている。
日本環境衛生施設工業会の専務理事も
「日本の技術はトップレベルだが、
管理運営能力がなければメジャーになり損ねる」と戒める。
官民一体の
「環境版インフラ輸出」成否のカギもそこにある。
(新聞記事掲載/環境技術立国(1))