琵琶湖の美味守れ
京料理で珍重される高級魚「ホンモロコ」や特産の
鮒ずしに用いられる「ニゴロブナ」などの
琵琶湖の固有種を増やそうと、
滋賀県が新たな対策に乗り出している。
回遊を妨げる外来水草の刈り取りや、
天敵のブラックバス(オオクチバス)など
外来魚の駆除が柱。
激減している漁獲量を回復させ、
「琵琶湖の美味」の保存につなげようという作戦だ。
[淡くて上品]と京都の料亭でも重宝されるホンモロコ。
肉厚の体長10センチ前後の白身魚で、塩焼きや天ぷら、
甘露煮など多彩な料理で味わえる逸品である。
1994年頃までは年間200㌧以上取れたが、
96年から急減し、2011年は14㌧に落ち込み、
価格も高騰。1キロ当たりの販売価格は、
かつての倍近い3000円程度で高止まりしている。
急減の原因を県などが調べたところ、
成魚は水温の安定した深い北湖で越冬後、春は
産卵のため浅い南湖に向かうが、そのルート上に
外来水草「オオカナダモ」などが広範囲に繁殖。
多くが産卵場所にたどり着けないことがわかった。
このため、南湖の約235ヘクタールで水草を
大規模に刈り取る作業を、県が先月20日から
スタート。6月中旬~7月上旬には100万匹の
稚魚を放流する予定だ。
一方、ニゴロブナについては、県や外郭団体
「滋賀県水産復興協会」が03年度から対策を実施。
稚魚を天敵のいない湖岸の水田で養殖し、
捕食されにくい2~3センチ程度に育ててから
湖に放している。昨年度までに8978万匹を放流。
県は「ようやく減少に歯止めがかかった」と強調する。
いずれの固有種も一番の天敵は外来魚。
本格的な駆除にも乗り出し、昨年度、水中に電気を
流して魚を一時的に気絶させる
「電気ショッカーボート」を導入。湖面に浮いてきた魚のうち、
外来種のブラックバスやブルーギルだけを網で捕らえる手法で
昨年度は約5.7トン、今年度は5月末まで約5.2トンを駆除した。
新たな漁法も工夫。ブラックバスは縄張り意識が強く、
特に産卵時期は卵を狙って近づくブルーギルを追い回す
習性があることを利用、釣り糸につないだブルーギルを
おとりにした(アユの友釣り)の応用漁法を編み出した。
ブラックバスの縄張りで試した実験では、
21匹のオスのうち、19匹を釣り上げることができたという。
今後、釣り愛好家に PRする予定だ。
琵琶湖の外来魚の推定生息数量は06年に
1920トンだったが、11年は1330トンに減少しており、
県の担当者は「対策を続け、在来魚中心の生態系を
取り戻したい」と話す。
【琵琶湖の食文化に詳しい】
堀越昌子・京都華頂大学教授(食物学)のお話
「琵琶湖ではアユやマスなど様々な魚がとれるが、
味の面では
ホンモロコが王様で、京料理に欠かせない存在だ。
鮒ずしも、後世に残すべき、琵琶湖を代表する郷土食。
滋賀県の作戦が成功し、
昔のように身近な食材となることを期待したい」