米国で「都心」回帰
米国の中規模都市で、若者や熟年層が
中心街「ダウンタウン」に
居住空間を求める傾向が強まっている。
金融危機後の倹約志向や
高齢化によるライフスタイルの変化が背景にあり、
郊外の一戸建てよりも通勤などに便利な中心街の
アパートを好む人が増加、車離れも進んでいる。
(米西部コロラド州デンバー)
「車なんかいらない。長時間の通勤もまっぴら」
再開発が急ピッチで進むコロラド州デンバー中心部の
ユニオン駅前。自転車で現れた
ライアン・マッカンさん(28)は2年前、
中部ネブラスカ州からデンバーに移り住んだ。
自転車の普及を促進する団体に就職し、
友人と4人で住宅を借りた。
「食料品もバーもジムも徒歩圏内にある」という。
故郷の実家は、車なしでは生活できない典型的な郊外にある。
家族なら夫婦で2台、子供が成長すれば人数分だけ車が必要になる。
マッカンさんは、
長時間かけて車で通勤する両親を見てうんざりしていたという。
ミシガン大学交通研究所によると、
若年層を中心に運転免許証を持つ
割合は減少傾向にある。18歳の場合、
1983年には80.4%だったが、
2010年には65.4%となった。
デンバーでは中心街への通勤者の46%が自転車や徒歩、
公共交通機関を利用。
有料の貸し自転車「バイク・シェアリング」が発達し、
市内は無料巡回バスが走る。
コロラド大学デンバー校のケン・シュロッペル教授(49)によると
第2次世界大戦後、退役軍人を対象に住宅ローンの
低金利政策がとられた。その結果、人々は郊外に家を建て、
中心街が空洞化した。だが、若い世代の
生活様式の変化で、80年代後半から90年代前半にかけて
中心街に人が戻り始め、
08年の金融危機が拍車をかけた。
教授は「家を買うことは、
アメリカン・ドリームではなくなった」と指摘する。
子育てを終えたベビーブーム世代(46~64年生まれ)も、
中心街のアパートを好む傾向にある。
ユニオン駅前では1200世帯分の賃貸アパートの建設が進み、
将来は2000世帯分が見込まれる。
子供の大学進学を機に4年前、
郊外から分譲アパートに夫と引っ越した
フランセス・フォージョニさん(52)は、
「庭の手入れも必要ない。最高」と語る。
デンバーのほか、人口100万以上の首都ワシントン圏や
南部のジョージア州アトランタ、
テキサス州オースティン周辺でも
中心街の人口増加率が郊外を上回っている。
空洞化で、再開発が容易となっていた都市に人口が
逆流している形だ。
デンバー中心街の再開発計画によると、
全事業の42%を住宅建設が占めており、
生活様式の変化が都市計画にも影響を与えている。