「高潔」鑑真 質素な袈裟
「お身代わり像」制作側が調査
日本最古の肖像彫刻とされる奈良・唐招提寺の
国宝・鑑真和上坐像(8世紀、脱活乾漆造り)
そこに描かれた袈裟は、仏教修行者が着る、
質素な衣の様式を表現していた。
像は、鑑真の死期を悟った弟子らが制作したと
伝えられ、師の高潔な雰囲気を示そうとしたらしい。
鑑真(688~763)の1250年忌に合わせ、
国宝像(高さ80センチ)を模した「お身代わり像」を
制作中の財団法人美術院(京都市)の調査でわかった。
国宝像の袈裟は青、緑、赤などの色が複雑に折り重なり、
山並みを表す「遠山模様」とみられてきた。
今回、色の配置や波線の表現などを詳しく調べ直した結果、
使い古した布きれを縫い合わせた「糞掃衣」を表現したものと
判明しました。長年着続けたかのような糸のほつれも描いていた。
一方、昭和期に修理された頭頂部やひざ以外の像全体で、
植物のエゴマ由来とみられる油分を検出した。
油は耐水性を上げて顔料を保護する効果があり、
正倉院宝物の伎楽面などに例があるが、
仏像で確認されたのは初めてという。
国宝像は、寺の梁が折れる夢を見て、
師の死期が近いと悟った僧忍基や唐から渡来した弟子らが
制作したと伝わる。
美術院の木下成通研究部長は
「鑑真を崇拝し、ありのままの姿を忠実に表現しようとした
思いを感じる。
弟子が作ったという伝承は真実に近いのではないか」と話す。
1250回忌を迎える6月6日をはさみ、国宝像は同5日から
5日間公開され、お身代わり像は同7日から常時公開される。
(松山尚幹)