乳房予防切除 国内でも


遺伝性乳がん 2病院で態勢整う


健康な人が乳がんを防ぐために乳房を事前に切除する手術が


国内でも始まるそうだ。


体験を公表した人気有名女優のアンジェリーナ・ジョリーさんの様に、


特定の遺伝子に変異があり、遺伝性の乳がんのリスクが高い人が対象だ。


がん研有明病院(東京)のチームは6月にも、病院の倫理委員会に


臨床研究として申請する。聖路加国際病院(同)も実施態勢を整えた。



【遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)】


特定の遺伝子の変異が原因で、乳がんや卵巣がんのリスクが上がる病気。


8割は遺伝子BRCA 1、2の変異が原因。


この遺伝子変異があると、乳がんだけでなく、卵巣がんにもなる。


70歳までに卵巣がんになるリスクは約10~40%。


卵巣の予防切除はすでに数カ所の病院で行われていた。


家族に次のような人がいる場合、HBOCの可能性が高い。


(1)乳がん経験者が3人以上いる。


(2)40歳未満で乳がんになった人がいる


(3)卵巣がんの人がいる


(4)男性の乳がん経験者がいる。



費用は希望者の自己負担で、切除費用は約100万円。


患者が希望すれば、術後に乳房再建もできる。


一般的には乳房内に風船状の器具を入れて少しずつ広げ、


数ヶ月後、広がった部位にシリコーンなどを注入する。


術式により切除費用に加えて100万~150万円程度かかる。


遺伝子検査の費用も自己負担で約20万~25万円。


すでに予防切除の相談や希望が寄せられているそうだ。


遺伝子の変異が見つかっても、乳がんは早期発見がしやすいため、


切除せずに、こまめに検診を受けるという選択肢もある。


片方の乳がんにがんができた人の場合でも、ホルモン剤を


服用して予防する方法もある。


がん研有明病院の新井正美・遺伝子診療部長は


「遺伝子に変異がある人がみな予防的切除が必要なわけでは


決してない。ただ、検診のたびに『がんが見つかるのでは』と不安に


さいなまれる人も少なからずおり、そんな人が切除という選択もできるように


したい」と話している。


聖路加国際病院の山内英子ブレストセンター長は


「大変な葛藤の末に乳房切除という選択をした人を


温かく見守って欲しい」と語る。(大岩ゆり)