松田龍平
ASAHI be evening
[舟を編む]に主演
猫背な男がカッコイイ
かつての日本映画には男が惚れ込む男優がいた。
こんな男になりたいと思わせる華やかなスターが沢山いた。
任侠映画を見た男たちは、肩で風を切って劇場を後にしたものだ。
しかし、それももはや昭和の風景になってしまった。
今の時代、男の観客を呼べるスターになりうる男優が果たしているだろうか。
それが一人いる。松田龍平だ。
「まほろ駅前多田便利軒」「探偵はBARにいる」シリーズなどで、
ハードボイルドな空気にコミカルな味付けを施した男の魅力を体現してきた。
ただ、今回「舟を編む」で演じた男は少々趣が異なる。
出版社で辞書編集部に配属された馬締光也役を演じる
その名の通り真面目な馬締は、完成まで10年20年かかる地道な作業を
コツコツこなす。「馬締については、僕にも分からない部分が結構あった。
監督と話し合いながら固めていきました」
馬締は口数が少なく、表情も乏しい。
「しかし、内には熱を秘めている。どうすればそれが出せるだろうかと思いました」
その時の石井裕也監督のアドバイスが効いた。
「目に見える演技をしなくても、気持ちとして一生懸命にやっていれば、
見る人に伝わる、と言われたんです」ちょっと猫背な姿勢や、
ひょこひょこした歩き方から、馬締は運動音痴だと分かる。
「監督は姿勢の良い馬締を想像していたようです。
でも、彼は相手の目を見られない人間。
それをリアルにやると、自然に猫背になっちゃった。
こう見せようと思って演じたところはありません」
馬締という男は不器用で遠回りばかりしている。
女性にモテるタイプでもない。しかし脇目もふらない一途さで、
仕事も恋も最終的には目指していたものを実現してく。
周囲のチャラチャラした人々に馬締の生き方は伝染する。
そして、私たち観客にも、いつの間にか彼がとても格好良く見えている。
かつてのスターが演じた理想の男性像とは確かにかけ離れている。
「でもそれって、時代の中で出来上がっていくものですよね」
男たちが映画館で馬締に憧れている図を想像すると実に楽しい。
その時は、見終わった男たちがちょっと猫背になり、
ひょこひょこ歩いていることだろう。
(文:石飛徳樹)
【松田龍平さんのミニ情報】
1999年、映画「御法度」(大島監督)でデビュー
同作により日本アカデミー賞、キネマ旬報、毎日映画コンクール、
ブルーリボン賞をはじめ その年の新人賞を総嘗めにした
皆様良くご存知である彼のお父様は
名優・怪優の故松田優作氏
優作氏は山口県下関市生まれ1972-1989(没40)
「弁護士を目指すため」叔母夫妻を頼って渡米し
米国籍取得のため
カリフォルニア州モントレ郡シーサイド市の高校に入学経験があり
関東学院大学文学部に入学するが役者に専念するため中退し
文学座付属演技研究所十二期生となった
ここで、あの有名女優・桃井かおりさんと知りあっている
お母様は女優・写真家でも活躍中の松田美由紀さん
叔母にはマルチな活躍で人気の熊谷真実さん
(元夫がつかこうへい氏で、書道家中沢希水氏と再婚発表)
弟、松田翔太さんも人気若手俳優
妻、太田莉菜さんとお子様が一人いる