・ラナをインダストリアど真ん中に引き戻していくパッチ
ついさっき登場させたばかりのフライングマシーンの
劣化した部品、なんていう、
取って付けた様な理由でアジト突入を決定するという
いかにもな御都合展開の様でいて、これもパッチの腹の内を
表現する為の意図的演出である。
大切な仲間ジムシーが囚われている、というお誂え向きの伏線
が予めきっちり用意されているのに
(同時平行で処刑の打ち合わせの様子も見せている)
それが、主人公が後付けで喜んで見せる材料に成り果てる、
という倒錯構造で、主人公カップルのエゴイスティックな
冷酷さ=恋愛感情が浮き彫りになる。
お互いの身を案じて言い出せなかった、という理由付けが
尚更、"仲間"の序列を露骨に感じさせ、よりシビアな構図を
際立たせている。
実は、おそらく本当はジムシーの存在まで把握していると
思われるパッチが、業を煮やして、致し方なく口実
を作って切り出すという結果になった事で、
二人の強烈なエゴ的恋愛感情を見せ付けられ、尚更
仲を裂こうと執念を燃やしていく、という流れが出来る。
この劣化したチップ、という理由のニュアンスは、
最終的にインダストリア奥地まで二人だけにされて連れ込まれ、
(チップの判定という実務上の理由から、行くのが必須
なのはパッチだけであり、最も守りたいはずのラナが
何の説明も無しに同行するのはセオリーから逸脱している)
実際にチップ探しをするシーン、のラナの怪訝な表情で
見事に伏線回収される。
怪しみだして「ひょっとして、見つからない事にして時間稼ぎ
しているのでは」と疑念が顔に出ているのか、
単に煩雑な作業をさせられて眉間に皺が寄っているだけなのか、
のどちらかな訳だが、
この微妙な判断を、視聴者と全く同時に
パッチもせざるを得なくなって追い込まれるという構図が
出来上がる事によって
どちらにせよ、即座に発見成功と判定したのが、
腹の内のうしろめたさの存在をうかがわる因果に繋がる。
直後のパッチ救出シーンにおいて、ラナがあっさり見事に
マシーンを操縦しているのが
ギャグの様でありながら、関連付いた伏線回収になっている。
残され島からファルコでラナを連行される冒頭の場面は、
人生初の"飛行機の羽根から風圧で振り落とされる"経験であり、
ラストのギガントでそれが丁度その逆になっている訳だが
「チップの劣化のせいでスピードが出ない」
フライングマシーンの徹底した低速描写や
ギガントの離陸時の挙動などから、
主人公の成長を象徴している訳ではなく
反重力作用を使ったマシーンの特性を表現している
のかもしれない。
インダストリア到着直後、
コナンだけをマシーンから降ろし、
何故かラナは連れ込み、
ついに仲を引き裂く事に成功する訳だが、
この場面での、主人公カップルの「必ずまた会える」的
コテコテな根拠なき精神論=信仰によって、
天才科学者であるはずのラオ博士(パッチ)が連絡手段を
まるで用意していない、それに触れる事すらしようとしない、
という事実が浮き上がってくる。
それまでに、「あれで腕は一流」な技術者だと認定した
まさに張本人のモンスリーが
無線機であっさりレプカに通報するシーン(武器はダイスに
奪わせている)や、
無線機を渡されて戻って来るテリットを鼻で笑うシーン、
などの伏線がある訳だが、これはつまり、
遥かに優れた科学技術と知識を持ち合わせた人物、の方は
傍受・盗聴のリスクを綿密に考慮している、という事であり、
そして同時に、その人物は当然傍受・盗聴を
ずっとし続けていた、という意味になる。
携帯電話が無かった時代ならではのプロット
の様にも感じられるが、
その後の時代における早急な普及までを予想した上で、
世界大戦で一気に使い物にならなくなって元に戻っている状況
を描いているとも言えるのかもしれない。
最大に巨大なギガントに対して、最も小さいキャラを
テラとネーミングしている辺りは
情報技術の発展と社会普及のタイミングを
良く言い当てていた、と言える。
・その他、ジムシーに対するラナの冷徹な対応
初対面で(しかも極めて困難なルートを越えて
わざわざ訪問して)、「コナンのお友達」ではなく「仲間」だ
と強く念押ししておいたのにも関わらず、コナンから
「良い奴だったでしょう」と友好的な印象を語る事を
求められ次第、「コナンの"お友達"だから勿論イイ人」だと
強硬な態度を剥き出しにされる。
"友達"、のシビアなニュアンスは、その後のサルベージ船
でのパッチからコナンへの発言でも重ねられる。
おじいからは、きっちり「仲間を探して」
「そして仲間の為に生きろ」と送り出されている。
ハイハーバーで、コナンを唯一たしなめ、
唯一暴力行使を踏みとどまらせた時には
「"豚"の事なんかで争って欲しくない」と
強烈な隠喩台詞を吐いている。
・最もそもそもな疑問、コナン(とジムシー)の異常な身体能力
架空テクノロジーや太陽エネルギーが強調されていても、
原子力、核兵器も普通に出しているので、やはり放射能に
よる遺伝子異常を想定した構造は意識されている。
ゴジラで爬虫類というフィルターがエクスキューズとして
機能している様な世の中に対しての問題意識から、
真正面から純然たる人間の子供で作ったのが
未来少年コナンなんだろう。
文明にしがみつくインダストリア市民から見たコナンは
当然の様にゴジラ状態である。
やはり、野性・僻地育ちというプロフィールだけで、
都合良く能力が授かるという設定を大前提にする訳はない。
インタビューでの宮崎駿の「コナンは決してスーパーマン
ではない」とのコメントは、正直な説明なんだろう。
当初はラナのテレパシー描写などもあって、年齢で輪切り
にした遺伝子異常なのかとも思えたが、ラナ(とラオ)の
テレパシーに物理的根拠が用意されている事から、
コナン・ジムシーの育った環境と、その他ハイハーバーなど
との差異、つまり
社会的立場に応じた生育環境の違い≒放射能汚染源からの
実際の距離、が因子となっていると考えられる。
原子力エンジンのロケットが放置された狭い島で、
丁度そのロケットの真下から奇跡的に水が湧いた環境で
育ったコナンは、由来がかなり明確である。
それに対して、ジムシーの生育環境には放射能汚染に関する
直接的な情報が無さそうである。
若者を職場に連行され、ただただプラスチップに集る
諦めきった大人達を蔑んでいる、その島育ちの子供ジムシー
は、まさしくリアルな現代の子供を表しているが故に
そこの要因を明確化させない事で、
全てを想像だけで補完させようという狙いだろうか。
主人公カップル側から徹底的に線引きされながら、
一人着実に成長していくジムシーが
やはり子供の感情移入を最もさせたいキャラクターなのだろう。
