近所に住んでいるある夫婦の家に半年ぶりぐらいに新年の挨拶に行った。2人とも80近い年齢だ。元々お互い犬を飼っていた事が縁で知り合い10年以上のお付き合いだ。ご主人はお酒とお喋りが大好き、奥さんは料理が上手で人をもてなす事が大好き。以前は土曜の夜になると私は犬を連れ、お家にお邪魔していた。お酒を飲みながら奥さんの美味しい手料理をご馳走になりながら、3人で楽しくお喋りする事が何よりも楽しみだった。しかしここ5年ほどはご主人が寝たきりの介護状態となり、私も休みが少なくなり今は年に2回か3回お邪魔している。

 夕方17時にお酒と実家からのお土産を持ってお邪魔した。ご主人は居間に置かれたベットに横になっていたが、私の顔を見て声は出さなかったが嬉しそうな表情をしてくれた。

 奥さんは赤ワインを出してくれ2人で「明けましておめでとうございます」と乾杯。テーブルにはローストビーフにサラダ、私が持って行ったお土産のカステラをわずわず切って並べてくれた。

「毎日病院の先生が見えるから本当に忙しいの。この間は歯医者さんまで来てくれたのよ」

「歯医者さんも来るんですか?」

「そうよ。先生が来るから必ずお茶は出すし、お茶菓子も用意するでしょう。部屋も綺麗にしとかなければならないし」と生き生きと話し出した。

 「この間なんか、この人がインフルエンザにかかっちゃって、私まで予防のために薬飲んで下さいって言われて」

「えっ、そうなんですか?」

「そうなのよ。全くね。ずっと家にいるのにインフルエンザにかかるなんてね。私の方が外に出てるのに」と不思議な表情をした。

「でもさ、この人のお陰で私は毎日忙しくて風邪にかからず元気なんだな、と思うようにしたの。きっとこの人がいなくなったら張り合いがなくなるんだろうね」と。

 嫌になっちゃう、という言葉がでてこない。実際にはしんどい事もあるはずなのに。

「みっちゃん、お皿片付けて」

突然ご主人が声を上げた。相変わらずだ。綺麗好きなのは変わらない。

「はーい」と奥さんはご主人のベットの隣にテーブルに置いてある、食べ終わったお皿を片付けに立ち上がった。

「ちえちゃん、餃子焼くね」

と奥さんがそのお皿を片付けながら餃子を焼きにキッチンに立った。

 その後ご主人はテレビを点けたり、止めたり、そして寝たり。かなり耳が遠くなっているらしい。

「ちえちゃん、,餃子出来たよ。温かいうちに食べて」

今度は黒エビスを出してくれた。再度乾杯。

 こんな、素敵な奥さんに出会えたご主人も幸せのはず。黙ってはいるけれど。どうか2人とも長生きしてくださいね。