有吉 佐和子
恍惚の人

つい最近、テレビドラマになりましたね。


前々から名著だとは聞いていて、いつか読まなくては思っていたのですが、

どうもこういう類の小説は読みにくい。

というか恐ろしい。


どうしても現実を直視せざるを得ないということが、読む前からわかってしまうからだ。


僕は31になる。親父は72になる。

72。


いつこの小説の茂造のような状態になってもおかしくないのだ。おまけに僕の兄はどうしようもない奴で、彼が両親の面倒を見るなどとは到底考えられない。


もちろんそれは知っていたが、僕はあえてその問題を考えることを避けていた。


まだ大丈夫だろう、と。



でもそんなことはもう言ってはいられない時期にさしかかっているのだ。


明日突然親父の頭がトンでしまっても、それは不思議ではないのである。だから僕はこの小説を真面目に読ませてもらった。免疫をつけるために。


もちろん本と現実とはまったく違うものだが、何も予備知識がないよりかはマシだ。

そんな感じで読んだ。


仕事も忙しく、プライベートも忙しく、いろいろ考えなくてはいけないことは日々増えていくように思えるけど、

もうひとつ、確実にこの先考えなくてはいけないことが増えた。


邪険に扱いたくない。ただ介護によって精神や人生や少ない金をすり減らすのも避けたい。

親父がそうなるという保障があるわけではないが、

ならないという保障もない。


いつの日か来るかもしれないその日を想定して、

僕は毎日を積み重ねることでそのとき取るべき行動を考え、決意を固めておかなくてはならない。


これもきっと大人としての責任なのだろう。