『「黙字」☆』
『英単語のつづりには、
表記されていても声に出さない文字がある。
「knife(ナイフ)」や
「knock(ノック)」の頭につく「k」が、
代表例としてよく知られている。
これを「黙字」と呼ぶそうである。
英語の先祖にあたる古英語では、
いまの「黙字」もしっかり発音されていた。
ものの本にそう書いてある。
時代とともに音が省略され、
表記だけが残ったらしい。
思えば英語に限らない、
声に出さなくとも読み取らなければならない黙字は、
現代の日本にもある。
不要不急な外出の自粛「要請」。
歓楽街などに向けた休業「要請」。
ウイルス禍の広がりで全国に拡大された緊急事態宣言だが、
都内ではまだ、
夜遅くに場末の居酒屋から笑い声が漏れてくる。
「yousei」の頭についた黙字の「k」を、
読み取れぬ人が多い。
保養地の長野県・軽井沢や茨城県のパチンコ店には、
首都圏ナンバーの車が増えたという。
「コロナ疎開」なる造語も耳にする。
この10年、
大きな災害の度に胸を痛め、
被災地に思いを寄せ、
自制的な行動で
世界の共感を集めた人々とは別の人種を見る思いがする。
誰に強制(kyousei)されるでもなく身を慎む。
日本人の美質と良識を信じての政府や自治体の「要請」
ではなかったか。
音にならない「k」を読み取り、
社会の約束事として受け止める。
その努力が、
感染の連鎖を食い止めるための数少ない手立てだろう。
黙字の「k」といえば、
「night(ナイト=夜)」の頭についた
「knight(勇士)」も思い浮かぶ。
日々の自制と自粛に心を砕く一人一人が、
息苦しい夜から社会を救うことのできる「勇士」である。
憎らしいウイルスどもに、
いつまでも暮らしを乱されてはならない。』
これは、
2020年(令和2年)4月19日(日曜日)の
産経新聞『産経抄』です。
声に出さなくとも読み取らなければならない黙字は、
現代の日本にもある☆
そうかも知れませんね。。。
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