恋に溺れたい海賊王 -15ページ目

恋に溺れたい海賊王

只今 恋に落ちた海賊王,戦国BASARA,銀魂に激はまりしております

こんな管理人ですが、絡んでいただける方、お待ちしております






「う゛う……おはよう…ございます…」



翌朝。こめかみ辺りを手で押さえ、●●●がキッチンに入ってきた。


ヨロヨロした足取り。
あれは完全に2日酔いだろ。



「……おう」



手を動かしたまま顔だけ上げると、目が合った●●●は、さっと脇に手を下ろした。

そしてどこか気まずそうに、おれの方に駆けてくる。



「あっ……あ、のぉー…」



コイツは往々にして分かりやすい。

何が言いたいのか手に取るように分かっていながら
俺からは何も、言ってやらない。



「どうした?」

「え、えっと、そのぉ……」



せわしなく泳ぐ目が、ちょっと笑える。

向き合ったまま長く感じる数秒が過ぎたのち。
●●●は意を決したように、重い口を開いた。



「あのっ!…ナギさん、…です、よね?」

「なにがだ?」

「……っ!……そのぉー…ゆうべ部屋に…運んで…くれたのっ…」



―― 尻すぼみの声。

不安げな表情で、●●●はオレの様子を伺う。

けどオレはまだ、はっきりとは、言ってやらない。



「覚えてんのか?」



●●●は1つ。ゆっくりと首を縦に振った。



「あっ、でも……ナギさんが立ってた事はなんとなく……でもそのあとの事は、そのぉ―…」
「覚えてねえ、と」
「う、…はい。……でも、起きたらちゃんとベットに寝てて…」
「それでおれだと思ったわけか?」



●●●は「はい」と肩を落とす。

その頭に手を置いた。



「ああ、おれだ…」

「やっぱり!…って、あのっ!」

「ん?」

「わたしっ!…変な事とか…言ってなかったでしょうか…」

「変なことか? たとえばどんなことだ?」



おれも大概、意地が悪いと思う。

変なことを言いそうになったのは、むしろオレの方なのにな。


けど、そんな事、知るよしもない●●●は。


「…それは……」



チラチラとオレの顔を伺いながら、あれやこれやと浮かばない考えを巡らせている。

その顔が面白くて、とうとうプッと吹き出した。



「……ナギ、さん?」

「悪い。いや、言ってねえよ」

「へ?」

「お前、すぐに寝ちまったからな。 別になんも言ってねえ」



笑いをこらえて教えてやると、●●●は一瞬フリーズして。



「はっ……はぁぁ…良かったぁ~~」



直後、大きく息を吐きだした。

ほんとにコイツは、からかい甲斐のあるヤツだ。

けど、べらべら喋って墓穴を掘っても洒落になんねー



「…ってことで、朝メシの用意始めるぞ。動けるか?」

「は…!はいっ!」



●●●が姿勢をビシッと正す。

その頭を、くしゃりと撫でた。



「んじゃ…メシの用意、始めるか…」



言って、続きを始めようとするオレの手を、●●●の両手がぎゅっと掴んだ。



「ん?」

「あ……あのっ!!」



見れば、さっきまでとは打って変わって、真剣な目が真っ直ぐ見ている。

―― ほんとにコイツは分かりやすい。



「……言わねーよ」

「………え、」

「ゆうべの事は、誰にも言わねー」

「………っ」

「奴らにも。……船長にも、だ…」



これが1晩考えての、オレが出した結論だ。

おれの口から船長に言うのは簡単だ。
どうにかして、やりたいとも思う。
いや。船長だったらホントはもう。
コイツの事なんか、全部分かってるんだと思う。


けど。それでも娼館に行き続けるのは。
寝首をかかれやすい娼館に、おれ達を、行かせないため。

………そういう人だ、船長は…


そしてそんな船長を、全部理解した上で。
健気に耐えるコイツの気持ちも、無碍にしたくなかった。


おれが口出すことじゃねえ……




「それとも言って欲しいか?」



問うと●●●は、ブンブンと首を横に振る。



「なら、お前が言おうと決めた時。……お前の口から船長に言え」



 な? と頭に手を置くと、おれの言いたい事が分かったらしく、●●●は一瞬、黙り込み。
それから「はいっ」と、小さな声で呟いた。
そのまま下を向こうとするから。


ガシッ


「その代わり…」



おれは頬を両手で挟んで、無理やり顔をこっちに向かせた。



「そ、…その代わり?」

「ああそうだ」



今度は俺が目を合わせ、少し語勢を強める。



「その代わり。独りで居たくねー時は、遠慮しないで俺に言え」

「……っ」

「とことんオレが付き合ってやる」

「……」

「だから。あんなとこで独りで呑むな」



わかったな、と。放してやると、●●●の目に、みるみるうちに涙が浮かぶ。



「泣くな」

「……っ!」



コイツの涙は、もう見たくねえ。
手元のタオルをひっ掴んで、後ろを向いて渡してやる。


少し置いて、「はい」とか細い声がした。



「ったく。しけた返事しやがって。ちゃんと分かってんのか?」



肩越しに後ろを振り返ると、そこにはもう、涙は無くて。
●●●は泣きそうながらも、「はい」と笑顔で頷いた。

その顔に、密かにオレはホッとした。




その日も昨日に続き、普段と変わらない●●●の声が船に響く。

ケタケタ笑って動き回るが

正直おれには、本気で笑ってんのか、無理に作って笑ってるのか、分からねえ。


ただ1つ言える事は……

アイツは海賊王の女として、必死で耐えてる、ってこと。


そんなアイツを見つめるうち、あっという間に日も暮れて

いつもと変わらねー賑やかな晩メシがようやく終わった。


その片付けを、2人でくっちゃべりながら、ゆっくりやる。


仕込みも、余ったモンをつまみながら、ゆっくりゆっくりと、こなしていった。



「さて……」



仕込みも終わり、時計を見る。



「11時か…。…んじゃ一緒に呑むか?」



棚の下に何本か酒があった筈だ。
歩き出す腕を、●●●がくい、と引っ張った。



「ん?」

「あの……今日は、もう……」

「けど、おまえ…」



●●●は手を離して、にこっと笑う。



「昨日、呑みすぎたので。…それに寝不足だし。…だから今日はほんとにもう…」

「そうか?……つか、無理してねーか?」



顔を覗くと、●●●はコクンと頷いた。

それから、サッと身を離す。



「じゃ、わたし。今からお風呂に行ってきます。できるだけ早く出ますので…」

「ばーか。ゆっくり浸かってこい」

「あ……でもっ。……じゃ、30分したら来て下さい。それまでには…」

「……30分な。…わかった」



うなずくオレに、●●●は「じゃあ」と笑って、背を向ける。

ドアを開け、出ようとして、くるっとこちらに振り向いた。



「ナギさん……」


「あ?」





「今日、ほんとにほんとに…ありがとうございました」


泣きそうな顔で笑うから、すぐに言葉が出なかった。

そうこうするうちドアが締まって、聞き慣れた足音が徐々に遠ざかっていく。



「…ったく…」



だからお前に惚れるんだろーが。


ち、っと小さく舌打ちをして


それでもおれは、ふっと笑った。






続く