(5) ドイツでは、冬でも、マラリアに感染?(1884年~1888年)
第18章 マラリア蚊媒介説に対する反論、及び、これらに対する再反論
(5) ハマダラカが生息し、かつ、良性マラリアのみが存在する土地(例:九州)に他の土地(例:台湾)から悪性マラリアが輸入されてきたときは、悪性マラリアが流行するはずである。しかし、実際には、そうでないのは、なぜか?という反論
【再反論】 Grassi氏によれば、各種マラリア原虫のハマダラカ体内において発育する適温がある。
そして、悪性マラリア原虫は30度、四日熱マラリア原虫は18度をもって、その適温となし、三日熱マラリア原虫は、その中間である。
これが、緯度及び気候において、マラリアの種類を異にする主因であるはずだ。
故に、外界との関係が、最も適当であるマラリア原虫が、該当する地域で、主病をなし、そうでないマラリア原虫は、たとえ、輸入されても、蔓延するに至らないで、消滅するはずだ。
思うに、わが国、内地において、三日熱マラリアのみ発生し、ほとんど、悪性間歇熱と四日熱マラリアを見ない理由も、また、このことに起因するのだろう。 |
↑『我邦ニ於ケル麻刺里亜蚊伝搬ノ証明』(都築甚之助,大町文興著。東京:都築甚之助,明34.10)(国立国会図書館のサイトの近代デジタルライブラリーで無料で閲覧できる)p 45-48を私が現代語訳したもの。
ドイツの話はかなり後の方に出てくるが、この章全体を、訳さないと意味をなさないので、そうした。
ちなみに、現在では、マラリアはハマダラカにより、媒介されることがわかっている。
もちろん、血小板輸血・医療従事者の針刺し事故などによって感染することもあるが、圧倒的多数のマラリアはハマダラカにより媒介される。
上記の答は現在の通説と異なっているので、複雑な事情を省略して、単純に解説する。
悪性マラリア原虫=熱帯熱マラリア原虫:放置すると、ヒトが死亡する危険性が高いマラリア原虫
良性マラリア原虫=三日熱マラリア原虫:放置しても、ヒトがあまり死亡しないマラリア原虫 |
と考えると、わかりやすいと思う。単純化するために、四日熱マラリア、卵形マラリア、サルマラリア等は考慮しない。
そして
九州:オオツルハマダラカが生息しているが、コガタハマダラカは生息していない。
台湾:コガタハマダラカが生息している。 |
と考えると、わかりやすいと思う。単純化するために、他に生息しているハマダラカは考慮しない。
ところで、熱帯熱マラリア原虫の増殖は
コガタハマダラカ > オオツルハマダラカ |
と考えると、わかりやすいと思う。このことを直接、証明した実験のデータを手元に持ってないが、こう考えるとわかりやすい。
(2) Anopheles miniumus(コガタハマダラカ) |
↑『大正時代のマラリア資料(台湾のハマダラカの種類)と揚子江の熱帯熱マラリア消滅』
http://supplementary.at.webry.info/200802/article_29.html
だから、当時、熱帯熱マラリアが土着蔓延している台湾で、夜間、屋内に50~100匹以上のコガタハマダラカが侵入してくるような劣悪な住居で、熱帯熱マラリアに感染したヒトが、九州に移動して、夜間、屋内に50~100匹以上のオオツルハマダラカが侵入してくるような劣悪な住居でかなりの長期間、過ごしていても、九州で熱帯熱マラリアが土着蔓延しなかったのだろう。
つまり、熱帯熱マラリアが土着蔓延するかどうかについては、主にハマダラカの種類に依存する。
もちろん、夜間、屋内に50~100匹以上のハマダラカが侵入してくるような劣悪な住居が多いという前提条件が必要であるが。
なお、オオツルハマダラカには、熱帯熱マラリア原虫を媒介する能力が全くないわけではないし、戦後の一時期ではあるが、北海道、本州、九州で熱帯熱マラリアが少し、流行したことはある。
著者(1942)は、華南において 予備実験的な ものでは あったが、シナハマダラカの 三日熱と 熱帯熱の 両原虫の 感染実験を 行い、三日熱原虫には シナハマダラカ, オオツルハマダラカ共に 感染したのに 対して、熱帯熱原虫ではオオツルハマダラカのみに 胃感染を 証明することが 出来た。 |
↑『大正時代のマラリア資料(台湾のハマダラカの種類)と揚子江の熱帯熱マラリア消滅』
http://supplementary.at.webry.info/200802/article_29.html
↑わかりやすくするために、和名で入力した。
熱帯熱マラリアは、昭和21年に、長崎県(36人)、熊本県(1人)、鹿児島県(2人)、岡山県(1人)、愛知県(1人)、大阪府(1人)で、昭和21年~昭和22年に北海道北見国留辺蘂(7人)で、昭和24年に、福岡県(1人)で、内地初感染(流行)があった。 |
↑『マラリア内地感染例調査報告』(長崎大学風土病研究所病理部(前主任・青木教授)
森川利美。『長崎医学会雑誌 第27巻 第4号』収載)
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/4812/1/fudo01_00_13_t.pdf
『ー医学の動向 第22集ー 地方病研究の動向』(金原出版。昭和33年11月20日発行)
から、まとめたもの。