そんな彼女を見てやれやれ、とゲドウ神とルト、そしてエンド神は笑みを漏らす。

 

『落ち着くまで沈んでいろ。子どもの後始末は我がする』

 

「こ゛どもじゃないも゛ん゛ん…!」

 

『泣くか怒るか、どちらかにしろ』

 

「うううう…」

 

泣きじゃくりながら目蓋を閉じる。

 

数秒で彼女はぴたりと泣き止み、ゆっくりと開かれた目蓋の奥は赤から青へと変わった。

 

気まずそうにちらちらとゲドウ神の様子を窺いながら、天使と入れ替わったエンド神は「面倒をかけてすまなかった」と謝罪すると、ゲドウ神は

 

「別に、迷惑を掛けられたなどとは思っていませんよ」

 

何も気にしていないように笑ってみせ、エンド神の頭部に腕を伸ばした。

 

「!」

 

「天使はルカに任せるとして。エンド神は、私が直々に褒めて差し上げましょう。えらいえらい」

 

ゲドウ神の登場とこれまでのやり取りに呆気に取られて言葉を発せずにいたリピート神は、エンド神が何故かあのゲドウ神に褒められている様を見て、ここでようやく彼女の元まで飛んで行き口を開いた。

 

「ちょ、先輩、俺は!?今回滅茶苦茶頑張ったんスけど!!おいエンド神そこ代われや!!」

 

「うるさい。こんな機会は滅多にない、故に御前と代わるわけにはいかない…」

 

「ちょっと見ない間になんか主張激しくなってません??天使の影響うけすぎッスよ」

 

ススス、とゲドウ神の傍に寄るエンド神、羨ましさとゲドウ神が復活したことへの喜びで感情が混沌としているリピート神、二人を交互に見て呆れ顔になるゲドウ神。

 

鍵盤から指先を離し、彼等を見守るように見上げる紅茶神は、誰にともなく零した。

 

「ふふ、久々にあの子たちの素敵な表情が見れたわ」

 

ルカはただ頷くと、真剣な表情で神々に声を掛ける。

 

「さて…このままだと、世界は確実に終末を迎える。…兄さんは、ゲドウ神に御願いすれば後のことはどうにかなるからって言っていたんだけど。任せていいかな?」

 

「えぇ、構いませんよ。もとより、そのつもりで起きた訳ですしね。貴方はいつも通り、平等に見守っていてください」

 

「……分かった、お願いね」

 

淡く白い光がルカの体を包んでいく。

 

彼は神祖として今回の結末を見届けなければならないため、天上界へ帰還しようとしているのだった。

 

ふと、そういえばゲドウ神が目覚める前、ルトに言われていたことを思い出してルカはゲドウ神たちの元へと飛ぶと、リピート神とゲドウ神の額にそっと口付けを贈り微笑んだ。

 

「この世界の双神から子供たちへ、ささやかな魔法を。これから君たちに何が起きるのか、僕には分からないけれど。どこにいても、君たちは必ず巡り会える。そういう魔法を、兄さんと共にかけておいたから、安心して行っておいで」

 

言葉の意味を直ぐに理解したゲドウ神は、ややあって頷き、一方のリピート神はいまいち理解出来ずに不思議そうな顔で口付けられた箇所に触れ、ルカを見る。

 

しかしもう半分ほど体が透けているルカはそれ以上何も言わず、ただ笑って天上界へと戻っていった。