「神性だよ、ゲドウ神のね」

 

「!!それで、先輩は目を覚ますんスか!?」

 

「理論上はね。だけど、こういう形で取り込ませるのは初めてだから上手くいくかは解らない」

 

ふむ、とルトはソレを見つめると包みから淡く光る青い球体を指で摘んで、何の躊躇いもなくごくりと飲みこむ。

 

それからじっと、ゲドウ神の意識が浮上するのを待つも

 

(可笑しい。十分すぎる神性を吸収して何もないなんて。目覚めるとまではいかずとも、多少の変化はあるはずなんだけど)

 

「…未来が、変わった?」

 

ぽつりと、零した。

 

しかし次の瞬間、大きく視界が揺らぎ、ルトはその場に崩れるように倒れ、意識がどこかへ引っ張られる感覚に僅かな不安を覚えながら気を失った。


 

 

 

 

 

「この先の物語を、君は知っているかい?」

 

ソレは、手に持っていた一冊の本を閉じた。

 

表紙には<深海図書館>とタイトルが記されているものの、著者の名はどこにも記されていない。

 

問い掛けられたアナタは、一つ頷いて口を開く。

 

「終末と始まり。神話は彼女の物語に変わる」

 

いや、とアナタは続けた。

 

「最初から、彼女の為の物語なのかもしれませんね」

 

湯気が立つティーカップの水面に、長く美しい黒髪の彼女がゆらゆらと映る。

 

物憂げな彼女の表情を眺めていたアナタに、ソレは意味深なことを告げた。

 

「全ての物語は、あの子の為のモノだよ」

 

「あの子?」

 

緩く首を傾けて見せるアナタは、しかし直ぐに興味を無くしたのか、テーブル上に置かれた数冊の本の中から薄紫色の本を選んで手を伸ばす。

 

その本のタイトルは<病夢図書館>。

 

「そろそろ彼女が訪ねて来る頃だから、部屋に戻るよ」

 

既に物語を“食す”ことに夢中になっているアナタをその場に残して、ソレは静かにその場を後にした。